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「月の立つ林で」(青山美智子)

今年は3年度末の忙しさが例年以上で、土日も祝日も出社する日が続いた。仕事が深夜に及ぶ日もあって、がむしゃらに働いていた若い頃を思い出すぐらいだったが、年度があけてようやく少しずつ忙しさが落ち着いてきた。還暦を迎えて忙しい仕事に就いているのはありがたいことだが、好きな小説を読む時間が無くなるというのはちと困る。考えてみれば、昨年の末に手話通訳者全国統一試験を受けた際も、試験前は好きな本を読む時間がなかったことを思い出す。私にとって読書時間の減少は、自身の時間的余裕のバロメーターとなっているようだ。

そんな「本を読む時間が無くなっている時」こそ良質の物語を読みたくなるのだが、先日は読んで良かったと思わされる素敵な物語に出会った。

月の立つ林で

青山美智子さんが書かれた「月の立つ林で」は、今年の本屋大賞にもノミネートされた一冊だ。残念ながら大賞を受賞することは出来なかったが、疲れた心を癒してくれる素敵な連作短編集だった。

長年勤めた病院を辞めた元看護師の怜花は、新しい仕事を探すものの、ことごとくうまく行かず悶々とした日を過ごしていた。一方、一流の役者を目指してバイトをしながら舞台に立っている弟の佑樹は、周囲の友人や知人にも恵まれて順調に夢を叶えつつある。そんな弟を疎ましく思う怜花は、ボッドキャストでフォローしているタケトリ・オキナの「ツキない話」というチャンネルを好んで聴いていた。ツキにまつわる話を毎日更新しているこのチャンネルは、聴く人の心を穏やかにする素敵なチャンネルだった。

他にも、売れないながらも夢を諦めきれない芸人や娘との関係に悩む二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生など、主人公の異なるいくつかの物語が綴られている。その一つ一つの物語が、いつしか「ツキない話」に導かれるように少しずつ繋がっていき、やがて心暖まる素敵な結末にたどり着いていくことになる。

青山美智子さんの作品は「赤と青とエスキース」を読んだ時にも感動したが、今回の作品はそれ以上に胸に響く一冊だった。心と体が疲れたときに、じんわりと効いてくる素敵な物語だ。

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