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「赤と青とエスキース」(青山美智子)、ぐっと胸に響く一冊

生まれてから半世紀以上が過ぎてくると、今までの人生をふと振り返ることが多くなる。そんな時には失敗したことや恥ずかしかったことを思い出すことが多いのだが、楽しかったことや嬉しかったことを思い出すこともある。割合としては6対4ぐらいだろうか。性格によってその割合は変わるのだろうが、失敗したことなどを思い出す時には「あの時こうしていれば良かったな」と思うのがセットだ。かといって、今の生活にはとても満足しているので、そういった失敗の積み重ねも結局は今の生活に結びついているのだと考えれば、『人間万事塞翁が馬』という故事成語はその通りだなと思う。

また、生まれてからこれまで色々な人に出会っているが、一瞬だけの出会いもあれば数年来の知り合いとなる出会いもある。さらに、過去に出会って少しだけ話をした人と数十年の年月を経て再び出会うこともあり、そんなささやかな出会いだったにも関わらず、一瞬でその時のことを思い出すこともある。人のご縁というのは不思議だが、だからこそ出会いを大切にするとともに、出会った人には優しい気持ちで接したいなと思う。

赤と青とエスキース

青山美智子さんが書かれた「赤と青とエスキース」は、一枚の絵を中心として綴られる連絡短編集。人の縁というのは不思議なもので、大切なものなんだということを感じさせてくれる一冊だ。

オーストラリアに留学中の女子大生レイは、日本での引っ込み思案な生活を変えたいと思っていたが、留学が始まってもその生活はなかなか治るものではなかった。そんな時に知り合ったのが現地に住む日本人のブー。ブーのおかげで少しずつ留学生活が充実したものになる。留学期限が徐々に迫ってきた頃に、レイはブーから現地の若手画家のモデルを頼まれる。その時に描かれた絵画が日本の若手額職人によって額装されたり、その絵がとある喫茶店に飾られたりとさりげなく色々な人の人生に関わってくる。そして、時を経て作者の元に絵が戻ってくるのだが、そこでこの絵が見てきたさまざまな人の人生がひとつになる。

ひとつひとつの物語がとても素敵で、人と人との間に生まれる絆や想いというものを感じるうえに「優しさ」が随所に漂っていて心が暖かくなる。時には涙が出そうになるような素敵な瞬間もあるが、何と言ってもエピローグ前の最終章を読んだ時に受ける驚きだろう。それぞれの物語に中でキーとなっていた「エスキース」が、こんな風に伏線になっていたんだと思わずため息が出るほど驚くとともに、前のページを何回も見返してしまった。

読後に心の中がググッと暖かくなるとともに、自分の身近にいる人のことを思い返し、これからも大切にしなくてはいけないなと改めて思わされる一冊だった。青山美智子さんの作品は何冊か読ませていただいているが、今まで以上に素敵なストーリー展開が心に響いた素敵な物語だ。

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