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「あずかりやさん」(大山淳子)心の中が暖かくなる素敵な一冊

今年の東京は春が一気にやってきて、勢い余って初夏になったりまた初春に戻ったりと落ち着かない。桜も一気に咲いて一気に散ってしまったが、それでも春の訪れというのは毎年理由なしに嬉しいものだ。

春になって暖かくなってくると、毎年不思議と読書量が増えてくる。もともと「テレビを見ているよりも本を読んでいる方が良い」というタイプだ。それでも一年の中では、活字を読んで頭にすんなりと内容が入ってくる時期とそうではない時期とがある。今は、活字を読んで頭にすんなりと入ってくる時期であり季節だ。冬の間に寒さで縮こまっていた脳が、春になってのびをしているのかもしれない。

そんな時にはホッとできる物語を読むのが良い。バスの中でも電車の中でも眠る前の布団の中でも、思わずウトウトとしてしまうぐらい穏やかな内容の本が、春のうららかな季節には合うのかもしれない。 

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大山淳子さんが書かれた「あずかりやさん (ポプラ文庫)」も春に読むのがオススメで、読み終わった時に心の中がホッと暖かくなる一冊だ。

物語の舞台は東京の下町にある商店街。その商店街の端っこで静かに営業しているのが、内容に関わらず一日100円で預かる「あずかりやさん」。物語の中心となっているお店だ。あずかりやさんのご主人は、目の見えない若い店主。日がな一日静かにお客を待ち、預けたい人が訪れると理由を聞かずに何でも一日100円で預かるのだ。

預かるものは印刷物であったり自転車であったりと様々だが、預ける人々にはそれぞれ事情があって、その事情一つ一つが物語を持っている。その一つ一つの物語それぞれ短編となっていて、そのた短編がいくつも続いて一つの物語となっている。

物語を語るのは、お店に掛かっている”のれん”であったり、お店の”ショーケース”や"ねこ”が語り部だったりするのも楽しい。また、物語の時間軸も一つではなく、複数の時間軸で流れていく。そして、店主が「見えない」ということが物語の深みを増しており、感動を深くさせてくれる理由の一つだ。

どの物語もちょっぴり切なくて、それでいて暖かい。そして、読み終わった時に心の中がほんわかと暖かくなる。そんな素敵な一冊だった。 

([お]15-1)あずかりやさん (ポプラ文庫)

([お]15-1)あずかりやさん (ポプラ文庫)

 

ふろく

 私が購入したのは、栃木の「うさぎや」さんの特製ブックカバーがかけられたバージョンの一冊。うさぎやさんの書店員さんが感動して仕掛けたこの特製ブックカバー。物語の中身と同じく感動的だった。