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「百貨の魔法」(村山早紀)

生まれ育った九州の田舎町に、春の花の名前がついた百貨店があった。現在は廃業してしまったが、戦後15年後の昭和35年に建てられた百貨店で、物心ついた頃には既に町の中心部で皆が集まる場所となっていた。私も幼稚園児や小学生の頃は屋上の遊具で遊び、中学生になったら制服制帽でのど自慢大会を見に行き、高校生になると参考書を買ったり学校帰りに買い食いをしたりと、生活の中に自然と入ってきている場所だった。

当時は町一番の高い建物だったのだが、実際には私が子どもの頃は屋上のある4階建ての建物で、4階には周囲を一望できる食堂があった。レストランではなくいわゆる銀皿食堂で、当時としては珍しいハンバーグ定食やスパゲティーなどが置いてあった。

この百貨店での一番の思い出は、母と二人で食べた昼食だ。自営業で家族の多かった我が家では、母と二人で出かけることはほとんどなかった。どういう理由だったのかは覚えていないが、母と二人で百貨店で買い物をした後に食堂でお昼ご飯を食べたことがあった。私が小学校低学年の頃だろうか。当時珍しかった「スパゲティミートボール」を目を輝かせながら食べたのだが、正面に座った母は何も食べずにニコニコしながら私の顔を見ていて、何だか照れ臭くて怒ったような笑ったような顔をしながら食べたのを思い出す。

私にとっての百貨店は、買い物をするだけの場所ではなく、子どもの頃の懐かしい思い出が詰まった場所なんだなと思う。

百貨の魔法 (ポプラ文庫 む 3-1)

村山早紀さんが書かれた「百貨の魔法」は、百貨店が舞台となったファンタジックで心温まる物語だ。書店の平台に置かれている場所も多く、いまとても人気のある物語の一冊なのですでに読まれた方も多いのではないだろうか。

風早の街の西にある星野百貨店は、戦後間もなく建てられた百貨店だ。戦災で焼け野原となった風早の街の復興に一役買った星野百貨店も、時代の波に飲まれて経営が苦しくなり、東京の大手百貨店の傘下に入った。しかし、従業員削減や福利厚生施策の見直しなどの経費削減策の多くを受け入れず、そのため大手百貨店も経営から手を引くのではないかという噂が飛び交うようになってしまった。

それでも地域から愛される星野百貨店には、『魔法を使う猫』の伝説があった。金目銀目の白い子猫で、百貨店のステンドグラスに書かれている子猫が時々百貨店内を歩いているという話だ。その猫に出会って願い事をすると、一つだけ願いを叶えてくれるという伝説だ。

そんな不思議な子猫の伝説がある星野百貨店でに、ある日突然コンシェルジュが配置されることになった。コンシェルジュとして勤め始めたのは、百貨店内のことを熟知した不思議な雰囲気の芹沢結子。彼女と星野百貨店とを軸として、百貨店に勤めるエレベーターガールや宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフなどに不思議な出来事が次々と訪れてくる。

この物語は、日本全国の色々な場所にある(あった)百貨店と同じく、戦後の焼け野原から復興を願って建てられた百貨店が舞台となっている。そんなレトロな雰囲気が昭和生まれ育ちの私にはノスタルジーを感じる一冊だったが、若い方には魔法の国の素敵なお話として感じられるかもしれない。

ラストはコンシェルジュの秘密と星野百貨店の創業者に訪れた奇跡で幕を閉じるのだが、読後に心の中が暖かくなるような素敵な感覚を味わえる一冊だった。

百貨の魔法 (ポプラ文庫 む 3-1)

百貨の魔法 (ポプラ文庫 む 3-1)

  • 作者:村山 早紀
  • 発売日: 2021/04/07
  • メディア: 文庫
 

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