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「独立記念日」(原田マハ)つながることで深みが出ている短編集、新装丁も素敵だ

短編集というのは区切りが良くて読みやすい反面、物語が分断されるので続けて読むのが難しくなる場合もある。しかし、今回読んだ短編集は少し趣が異なっていた。短編同士は内容的に連続していないのだが、微かな部分で繋がりのある構成となっていて面白い。

人と人とがつながる物語 

「独立記念日(原田マハ)」表紙

今回素敵だなと思いながら読んだのが、原田マハさんの「独立記念日 (PHP文芸文庫)」という一冊。24の短編が一冊になった短編集だ。

内容(「BOOK」データベースより)
恋愛や結婚、進路やキャリア、挫折や別れ、病気や大切な人の喪失…。さまざまな年代の女性たちが、それぞれに迷いや悩みを抱えながらも、誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る。寄り道したり、つまずいたりしながらも、独立していく女性たちの姿を鮮やかに描いた、24の心温まる短篇集。 

データベースで紹介されているとおり、様々な悩みを持ちながらも前向きに進んでいく女性たちを描いた短編集だ。どの物語も短い中にも考えさせらることがたくさん盛り込まれていて、それぞれに素晴らしい内容だなと感動を覚える。

短編集であり前後の物語には何の関連もないのだが、次々と読み進めていっても他の短編集と違い頭の切り替えをそれほど必要としない。それは、物語の中にさりげなく出てくる人物が、次の物語の主人公になっているという「つながり」があるからだろう。

例えば、一つの物語の主人公がとあるアパートを訪れるが、会いたいと思っていた相手がいない。隣の住人に尋ねてみると、「先週引っ越したようだ」という返答がある。この返答をした隣の住人が、次の物語の主人公になっているという感じになっている。

最初は気づかなかったが、いくつかの短編集を読み進めていくうちにそれに気づいた。そうやって気づくことで何だか謎解きをしているような気持ちになり、さらに次の物語に気持ちが入っていくんだなと感じた。

「つながり」ということも、この短編集の中に流れている一つのメッセージかもしれない。

新装丁も素敵だと思う

”ジャケ買い”という言葉がある。”ジャケット買い”の略だ。CDや本などを買うときに、 中身ではなくジャケットのデザインが気に入って勝手しまうことを言う。もちろん、アーティストや著者の名前を見てからジャケットに目がいくということが多いのだと思うが、ジャケットの雰囲気で内容まで無意識に良いと思ってしまうことはあるだろう。

今回ご紹介した「独立記念日」は、最初に文庫本として出されたのが5年前の2012年だ。その時には女性が空を見上げている挿絵だったのだが、今回の増刷では「花をつけた木の枝」が描かれている。

どちらも「独立記念日」をイメージさせられるジャケットだが、個人的には今回の挿絵が春という今の季節にマッチしていて思わず書店で手に取ってしまった。ネットでは旧の装丁本が販売されているようなので、気になる方は書店で現在販売されている文庫本を手に取っていただきたい。

原田マハさんは好きな作家さんの一人だが、原田マハさんの作品イメージと今回の新装丁は私の中でピッタリと一致した。それもまた、ファンとしては嬉しいことの一つだ。