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「ぶたぶたのお引っ越し」(矢崎存美)

つい最近引っ越しをした。8年間住んだマンションを出てすぐ近所に引っ越したのだが、距離が近いので引っ越し自体はそれほど大変ではなかったものの、引っ越しの前後の各種手続きなどを含めるとやはりたいへんだ。息子はすでに独り立ちしているので夫婦二人での引っ越しだったが、子どもが小さい頃の引っ越しに比べると荷物の面ではかなり楽だった。

私自身は子どもの頃に学区が変わるほどの引っ越しは経験しなかったが、小学生の頃に同級生が何人か遠くに引っ越して寂しい思いをしたことがある。その中の一人に電気店のKくんという友達がいたが、ある日突然学校に来なくなり自宅の電気店ももぬけの殻になっていた。仲が良くて一緒に遊んだり冗談を言い合ったりしていただけに、Kくんに何があったのか心配しながらも小学3年生の私にはさっぱり訳が分からなかった。その後、両親が「商売が立ち行かなくなって親戚の家に身を寄せているらしい」と話しているのを小耳に挟んだが、今から考えるといわゆる夜逃げのような状態で引っ越したのだろう。あれから半世紀経つが、いまでも「引っ越し」という言葉を聞くと当時のことを思い出すとともに、日に焼けていていつもニコニコしていたK君の顔を思い出す。

ぶたぶたのお引っ越し (光文社文庫)

矢崎存美さんが書かれた「ぶたぶたのお引っ越し」は、引っ越しをテーマとした短編集だ。本作で35冊目というとても息の長いシリーズものだが、私は一冊目からすべて読ませていただいていてすっかり”ぶたぶたフリーク”と化している。どの物語も心温まる心のビタミン剤のような物語なので、新作が発売されると息をするように読んでしまう。

シリーズに共通して登場する「山崎ぶたぶた」さんは、しっぽがくるんと丸まった可愛いぶたのぬいぐるみ。それなのに中身(?)は渋い声の中年男性で、色々な人の悩みに丁寧に優しく寄り添ってくれる存在だ。物語ごとにぶたぶたさんのパーソナリティに関する設定は変わるのだが、今回も「引っ越し」をテーマとした物語だけに、引っ越しアドバイザーであったりアパートの隣に住む住人だったりと設定はバラバラだ。それでも「主人公がぬいぐるみ」だということも含めて違和感を感じないのは、著者の筆力が素晴らしいからにほかならない。

田舎への移住を考えて短期の仮住まいを始めた夫婦は、移住に突っ走る夫と考えが合わない妻がその悩みを移住アドバイザーの豚豚さんに相談する。また、「訳あり物件」に住むことになった若者は、隣に住むぶたぶたさんとの交流で体と心の健康を取り戻す。そういった短編が3編収録されている短編集は、疲れた時に読むと心の疲れが取れる素敵な一冊だ。大人だけではなく小学高学年以上の子どもたちにも読んで欲しい一冊だなと思う。

今回は初めてぶたぶたシリーズを電子書籍で読んでみた。個人的には紙書籍の方が好きなのだが、電子書籍は会社の行き帰りや寝る前の電気を消してからも読めるのが良い。「ぶたぶたのお引越し」を読んで温かい気持ちになって、そのままパタンと寝てしまうのもなかなか良い。

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