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「ランチタイムのぶたぶた」(矢崎存美)

20代の頃はいつも腹ペコだった記憶があって、味はともかくとして安くて量の多い食事を好んで食べていた。30代、40代は仕事も忙しくて息子も生まれて、とにかくバワーのつく食事をとっていたような気がする。

そして50代も後半になった今は、量は少なくて良いので自分が美味しいと感じるものをゆっくりと味わうことを優先するようになってきた。年齢とともにあっさりとしたものを好むようになり、時間にも余裕が出来てきたからだとは思うが、何よりも5年前に長らく刷っていたタバコを止めたのが大きい。

それまでも食いしん坊で色々なものを食べてきたが、タバコを止めてからは味覚がガラッと変わり、少し大げさな言い方をすると何を食べても味の深さを感じるようになってきた。例えて言うならば、常にコントラストが弱くてボンヤリとした写真を見ていたものが、グッとコントラストが増して色彩も強調された写真を見るような感じだろうか。いや、逆に分かりにくいか。

いずれにしても還暦を前にして食いしん坊に拍車がかかった私は、高級な食材を求めるグルメとは対局にありながらも、身の丈に合った美味しいものを探す「孤独のグルメ」のようにささやかな贅沢をするようにしている。だからこそ、夜の会食を控えるべき昨今では、ランチタイムのひとときをとても楽しみにしている。

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矢崎存美さんの書かれた「ランチタイムのぶたぶた (光文社文庫)」は、本作で34冊目というとても息の長いシリーズものだ。私も一冊目からすべて読ませていただいているが、主人公がぬいぐるみで、それなのに中身(?)は渋い声の中年の男性で、その時々で職業が変わるという非常に多様性に富んだシリーズだ。

今回の一冊はランチタイムがテーマ。一人暮らしの大学生がリモート授業のために人と接することがなくなったが、突然現れたぶたぶたとランチを一緒に食べることで徐々に元気を取り戻していく。また、スーパーで働く女性が家族のお弁当の残りを爆弾おにぎりにして職場に持っていくと、休憩時間に休憩場所でぬいぐるみのぶたぶたと思いがけず話をすることになり、思い悩んでいたことが徐々に自分の中で解決していく。さらに、お母さんが風邪で具合の悪くなった6才の女の子が、一人で買い物に出かけてしまうが、そこでぶたぶたに出会って素敵なお弁当を作ってしまう。

そんなランチタイムをテーマにした素敵な短編7作が一冊になっており、最後に全ての短編がふんわりとひとつにつながっていく。いつもながら「ぶたぶた」が主人公なのではなく、「ぶたぶたと関わった人々」が主人公となっている短編集だ。

今回はそれぞれの短編のなかで美味しそうなランチが登場していて、読みながらお腹がグーっとなってしまうことが多々あった。食いしん坊の私には目に毒なのだが、それでもこういうお店があったり、こういうお弁当を食べたりできると良いなと思うような内容ばかりだった。ほんわかと心温まるシリーズの心温まる最新作は、ランチタイムの楽しさをも教えてくれる一冊だった。

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