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【読書感想】「湯治場のぶたぶた」(矢崎存美)

天気予報を見るとまだまだ暑い日が続くようで、いつになったら涼しくなるのかまだまだわからない状況だ。それでも確実に季節は秋になっていくので、これからは紅葉の季節が楽しみで待ち遠しい。

紅葉の季節といえばやはりお出かけには温泉もセットだろう。のんびりと温泉に身を委ねながら紅葉を見上げるというのは、考えただけでも気持ちが和らぐシチュエーションだ。最近では日帰り温泉も人気で、各地に綺麗で特徴のある施設が数多くあるが、歳をとると「湯治場」で自炊や地元の食堂で食事をしながら、数日のんびりするのも良いなと思う。今まで「湯治場」を訪れたことはないが、昔から親しまれてきた場所だけに、全国各地に素敵な「湯治場」があるようだ。

矢崎存美さんが書かれた「湯治場のぶたぶた (光文社文庫)」は、山の中のひなびた湯治場が舞台の短編集だ。本作で36冊目というとても息の長いシリーズ物だが、私は一冊目からすべて読ませていただいていてすっかり”ぶたぶたファン”。どの物語も心温まる心のビタミン剤のような物語なので、新作が発売されるとすぐに購入して一気に読んでしまう。

シリーズに共通して登場する「山崎ぶたぶた」さんは、しっぽがくるんと丸まった可愛いぶたのぬいぐるみ。それなのに中身(?)は渋い声の中年男性で、色々な人の悩みに丁寧に優しく寄り添ってくれる存在だ。ぬいぐるみが歩いて話をして料理も作るという非日常的な設定なのだが、各短編の主人公はぶたぶたさんではなくどこか気持ちが疲れた人たちだというのも特徴的だ。また、物語ごとにぶたぶたさんの職業設定は変わるのだが、今回は湯治場の経営者でありカウンセラーでもあるという設定になっている。物語の良さを文章でご紹介するのは私の筆力では困難なので、まずは一冊読んでいただきたいというのが本音のところだ。

さて、今回の一冊には3つのお話がまとめられていて、一話目の主人公は仕事で精神的に疲れてしまった45歳の会社員。家族にも勧められて「小説を書くために」湯治場にやってくる。そこでぶたぶたさんや宿の人々に出会い交流することで、徐々に心がほぐれていく。二話目の主人公は湯治場でアルバイトをしている大学2年生の男子学生、三話目の主人公は介護を終えた定年退職後の女性。どちらも一作目と同様に温泉宿で出会った人々とのふれあいの中で、悩みや心の疲れが徐々に取れていくという内容だ。

物語に登場する人々はどの人も優しくて穏やかで、主人公とのやりとりを読んでいるだけでも心が穏やかになってきて元気が出てくる。前述した通り「心のビタミン剤のような物語」ならではなのだ。

最近ちょっと疲れたなと思われるのでれば、ぜひ一度このシリーズを手にとっていただきたい。その際にはどの物語からでも楽しく読めるが、可能であれば第一作の「ぶたぶた (徳間文庫)」を読むとその後の物語はどこから読んでも楽しめると思う(著者もそのように書いていらっしゃいますし)。

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