ここ十年来、読書記録を付けているが、昨年は春先から夏前までが一年で一番本を読んでいた。季節的に読書に向いているというのもあるのだが、緊急事態宣言で家の中で過ごす時間が増えたというのも大きな要因だろう。
また、読んだ本の種類を見てみると、もともと好きなジャンルであるミステリーものが一番多いものの、心暖まる内容の物語も好んで読んでいた。先行きが見えない中でのステイホームだったので、心が落ち着く物語で平均を取っていたのかもしれない。
もともと本好きで様々なジャンルの本を読むのだが、好きな作家さんのシリーズものもいくつか好んで読んでいる。どれも素敵な物語ばかりなのだが、好きなシリーズを読み始めて主人公が登場すると、久しぶりに仲の良い友人に会ったような気になることが多い。だからこそ、好きなシリーズの最新作は、ゆっくりと過ごす休日にゆっくりと読むのが良い。
矢崎存美さんの“ぶたぶたシリーズ”は私のお気に入りのシリーズで、今回発売された「名探偵ぶたぶた 」が33作目という実に息が長いシリーズだ。私は33作すべてを読んでいるが、どれも心暖まる短編集ばかりだ。
ぶたぶたシリーズの主人公はピンク色をしたぬいぐるみ。しかしただのぬいぐるみではなく、話をして、歩いて、普通に生活をしている"山崎ぶたぶた"という名前のぬいぐるみだ。毎回いろいろな役柄で登場するぶたぶただが、今回は「名探偵」というタイトルがついていながら、職業はお医者さんであったりホテルマンであったりと様々だ。
小さな謎。心に引っかかった、昔の記憶。
失くしてしまったものの行方。胸に秘めた、誰にも言えない秘密。
そんな謎や秘密を抱えた五人が出会うのは、なんとも「謎すぎる」ぶたのぬいぐるみ、山崎ぶたぶた。
小さくてピンク色で、かわいいけど、実は名探偵って、本当⁉――本当なのだ。
悩みを解決するヒントをくれるんだって。
心温まる謎解き、5編を収録。お母さんの電話の謎
ホテル、記憶の謎
いなくなった友人の謎
ぬいぐるみが消えた謎
心にかけた鍵の謎(Amazonより)
ぶたぶたシリーズに登場し山崎ぶたぶたさんに出会う人は、誰もが心のどこかに傷を負っていたり、哀しさを背負っていたり、悩んでいたりという人たちばかりだ。そんな「ちょっと寂しい人達」が、ぶたぶたと出会うことで心が元気になっていく。そして、そういう物語を読むことで、自分まで元気をもらえる物語だ。
毎回書いているが、ぶたぶたシリーズは私にとっては心を暖かくしてくれるサプリのような物語だ。