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「居酒屋ぶたぶた」(矢崎存美)、今回も心温まるホッとする一冊だった

本好きで年間にたくさんの本を読む。そのなかでも、新刊が出ると必ず読む「定番シリーズ」がいくつかある。初めて読む作家さんの物語もワクワクして良いが、定番シリーズには登場人物やストーリー展開に安心感がある。「このシリーズを読めばこんな気持ちになる」というのが分かっていると、落ち込んでいたり気疲れしていたりする時には効果的だ。

そういった「安心できる定番シリーズ」をたくさん知るためにも、年間を通じた読書の時間は大切にしている。

心温まる「ぶたぶたシリーズ」最新刊 

「居酒屋ぶたぶた」表紙

気分的にゆったりしたい時に読みたくなるのが、矢崎存美さんの「ぶたぶたシリーズ」。シリーズ25作目となる「居酒屋ぶたぶた (光文社文庫)」が12月に発売されたが、いつものように心温まる短編集だった。 

内容(「BOOK」データベースより)

寒い冬の夜。商店街の一角に気になる店が。覗いてみると、温かな雰囲気に心が躍る。ああ、入ってみたい、そんなとき。もし、店の隅にピンクのぶたのぬいぐるみが転がっていたら、それは「味に間違いない店」の目印かも。見た目はぬいぐるみ、中身は心優しい中年男性。山崎ぶたぶたが、いろんなタイプの飲み屋さんで、美味しい料理とともにあなたを待っています。 

 「ぶたぶたシリーズ」の主人公はピンクのぬいぐるみ。バレーボールほどの大きさの可愛い"ぶた”のぬいぐるみだ。しかし、ただのぬいぐるみではなく、歩いて、しゃべって、仕事をしていて、料理が上手な優しい中年男性なのだ。

なぜ動けるのか、なぜ話せるのかということには物語の中では言及されていない。「山崎ぶたぶた」という名前で、万能な優しい中年男性というだけだ。不思議だけれども、素性やなぜ動けるかということは物語とは関係ないのだ。

そんな"ぶたぶた"と知り合った人々は、心に抱えていた悩みや悲しみが徐々に薄れていき、ぶたぶたと知り合ったことで幸せになっていく。このシリーズはそういったストーリー展開が一貫している。そこに読んでいて安心感を覚えるのだ。

今回の書き下ろしは「居酒屋」が舞台となっているが、一話ごとにお店の種類も違えば場所も違う。話は連続しておらず設定もバラバラで、単に「山崎ぶたぶたさんが経営するお店」に「各話ごとの主人公が訪れる」という内容だ。

そして、お店に訪れた主人公達は、それぞれが抱えていた悩みや苦労を綺麗さっぱりと洗い流していくというのが清々しい。

童話のようでいて実に現実的な事件や悩みが発生する。そのギャップも読んでいて楽しい要素のひとつだろう。今回もまた、ぶたぶたさんの活躍に心が温まるとともに、ホワッと優しい気持ちになることができた。心を元気に暖かくしてくれる、心のサプリメントのようなシリーズだ。 

居酒屋ぶたぶた (光文社文庫)

居酒屋ぶたぶた (光文社文庫)

 

ショートショートと短編集の間のようなシリーズ 

「ぶたぶた図書館」の表紙

私が「ぶたぶたシリーズ」に初めて出会ったのが、2012年に発売された「ぶたぶた図書館 (光文社文庫)」だった。当時は「子ども達のぬいぐるみが図書館で一泊する」というイベントが始まった頃で、それと連動してこの一冊を手に取って読んだ。

その時にストーリー展開や内容にぐわっと心を鷲掴みにされた。その後、それ以来に発売されていたシリーズものを遡って読み、新しく発売されるものも欠かさず読むようになった。

話はかなり遡るが、中学生の頃には星新一さんのショートショートにのめり込んでいた。もう40年も前の話だ。世の中にこんな面白い物語があるのかと驚き、お小遣いをせっせと貯めては星新一さんのショートショートを読み漁った。学校の図書館にも、配備要望を出していたぐらいだ。

ぶたぶたシリーズにも同じように惹かれるものがあるが、それもそのはず作者の矢崎存美さんは1985年に「星新一ショートショートコンテスト優秀賞」を受賞されていた。引き寄せられるように読むようになったのもまた、ご縁なんだなと思う。