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書評「あの日、松の廊下で 」(白蔵 盈太 )

歴史の世界に「たられば」は無いが、「あの時こうだったら歴史はどのようになっていたのか」を考えるのはなかなか楽しいものだ。同じように、歴史上の出来事をもう少し身近な出来事として捉えられれば、歴史の勉強がもっと楽しくなるのかもしれない。

学生の頃は日本史を選択していたが、教科書に書いてある「文字」だけを暗記するのに一生懸命で、そこにある人々の生活に目を向けないまま学習をしていた。例えば、徳川家は江戸幕府を開いて260年あまり日本を統治していたが、そこにはいろいろな人が働いていて、それぞれ苦労しながら生活していたはずだが、なかなかそこまで思いが及ばない。歴史上の出来事には目が向くものの、それにまつわる人々の働きや暮らしまでは情報がないというのも一つの原因だろう。

そういった部分を補完してくれるのもまた、「小説」の役割であって惹きつけられるところなのだろうと思う。

あの日、松の廊下で (文芸社文庫 し 6-1)

白蔵 盈太さんが書かれた「あの日、松の廊下で」も、歴史上の出来事をフィクションながら補完してくれる物語だ。また、時代劇ながらお仕事小説とも言える作品であり、胸に響く感動的な物語だ。

旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きた日である。目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として、彼はどんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた物語。松の廊下刃傷事件の真実を知る男・梶川与惣兵衛が見たものとは。 

物語の冒頭は、松の廊下での事件から2週間が過ぎた場面から始まる。そこから一転して事件の3ヶ月前に話が戻り、徐々に事件の日までの出来事が綴られている。そこには、歴史で習った浅野内匠頭や吉良上野介とは違い、とても人間味のある人物像が描かれていて新鮮だ。また、物語の主人公はこの二人ではなく、松の廊下で浅野内匠頭を止めた梶川与惣兵衛という下級旗本。与惣兵衛は実に実直な人物であり実務家なので、現代の真面目な会社員と重なる部分があって、「江戸時代も事務方は苦労していたんだなと、ついつい感情移入をしてしまう。

そして、読後に胸に響くじんわりとした感動は、松の廊下の出来事の登場人物を「文字」としてではなく「人」として感じる事が出来たからこそだと思う。とても素敵な物語に出会うことが出来た。

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