本好きで年間かなりの数の本を読むが、図書館で借りたり古本を買ったりするのは性に合わないため新品を購入している。そうなると書籍代がけっこうかかるので、自然と文庫本を買うようになる。書店でも文庫本がメインで置かれていて、話題作などの新刊が単行本になって並んでいるという感じだ。
最近では最初から文庫本として発刊される人気作家の本もあるが、大抵の本は文庫本の売れ行きが良ければ文庫化される。だからこそ、好きな作家さんの本は応援するという意味でも、単行本として出された時に買うべきなのだろう。
そうは言っても、単行本は文庫本約2冊程度の価額。選ぶのにも慎重になってしまうし、「試しに買って読んでみようかな」という訳にはいかないのだ。そんな観点で今回も2冊選んでみた。
一冊は柚月裕子さんの書かれた「検事の信義」。柚月裕子さんと言えば、最近では「孤狼の血」が映画化されたことでも有名だが、検事の佐方貞人が主人公となっているこのシリーズも累計40万部を突破する人気の作品だ。
任官5年目の検事・佐方貞人は、認知症だった母親を殺害して逮捕された息子・昌平の裁判を担当することになった。昌平は介護疲れから犯行に及んだと自供、事件は解決するかに見えた。しかし佐方は、遺体発見から逮捕まで「空白の2時間」があることに疑問を抱く。独自に聞き取りを進めると、やがて見えてきたのは昌平の意外な素顔だった。
佐方貞人シリーズはすべて読んだか、どれも緻密に考えられたミステリーで、人の心の危うさや優しさを考えさせられるヒューマンドラマでもあった。最近、本シリーズが次々と文庫化されて書店の店頭に登場しているが、新作ではどのような驚きを与えてもらえるのかが楽しみだ。
もう一冊は青柳碧さんの書かれた「むかしむかしあるところに、死体がありました。」。皆が知っている昔話をモチーフにしたミステリー作品で、昔話の主人公たちの特徴や道具などを利用したストーリー展開が見事らしい。
「浦島太郎」や「鶴の恩返し」といった皆さんご存じの《日本昔ばなし》を、密室やアリバイ、ダイイングメッセージといった
ミステリのテーマで読み解く全く新しいミステリ!
「一寸法師の不在証明」「花咲か死者伝言」「つるの倒叙がえし」「密室龍宮城」「絶海の鬼ヶ島」の全5編収録。
どちらもワクワクしながら読み始めているのだが、期待は裏切られないだろうと確信している。読後の感想はまた別途書かせていただくことにしたい。