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「この世にたやすい仕事はない」 (津村記久子)

お盆休みも終わって日常の仕事に戻った方も多いだろう。また、学生であれば逆に今がアルバイトの最盛期で、授業が始まるまでにたくさん働いておこうという人が多いかもしれない。

私は昭和から平成に移る頃に、今の会社に入社し働き始めた。最初に勤務した部署を含めるといくつもの職種を経験したが、どの仕事もそれぞれに楽しくて、それぞれに大変で、なかなか良い経験をしてきたと思う。

それぞれに学ぶことが多かったのだが、仕事の楽しさややりがちというものは、業務内容もさることながら一緒に働く人々との相性も大きい。残業が多くて体力的に厳しい職場でも、上司や同僚と穏やかな関係を気付けていれば頑張れたものだ。逆に、業務的にはある程度融通がきいても、職場の雰囲気がギスギスしていて働きにくいなと感じたこともある。

そう考えると、仕事の苦労というのは業務内容ではなく対人的な問題も大きいことがわかる。逆に言えば職場の人間関係で良好であれば、賃金の額や業務の困難さはあまり問題にならないということかもしれない。もちろんその程度にもよるのだが。 

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

津村記久子さんの書かれた「この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)」は、働くことを人とのつながりから考えさせてくれるお仕事小説だ。

主人公は30代中盤の女性。大学卒業後に10年以上勤めた会社で”燃え尽き症候群”になり退職。実家に戻って静養していたものの、失業保険が切れたので働かざるを得なくなる。仕事に対して辛い思いのある彼女は、ハローワークで「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?」と質問してみたところ、物腰柔らかな相談員は「あります」と即答。

隠しカメラを使った小説家の監視や巡回バスのアナウンス原稿づくり、おかきの袋の裏に印刷する雑学を考える仕事など、ニッチでマニアックな仕事を紹介してくれる。それぞれの仕事にマイペースで取り組むうちに、徐々に働くことへの考え方が変わってくる。

物語に登場する仕事は、どれも”ありそうで実はないだろう”と思える内容だが、逆言えば「こういう仕事があれば一度やってみたい」と思わされ仕事ばかりだ。そして何よりも、どの職場にも個性豊かで心優しい人々が上司や同僚として存在していて、こんな職場なら居心地が良いだろうなとも思わせてくれる職場ばかりだ。 

やっぱり仕事は内容だけじゃなくて環境だよなと思わせてくる一冊だった。 

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

この世にたやすい仕事はない (新潮文庫)

 

 津村さんの書かれた物語では、こちらもおススメです。 

oyakode-polepole.hatenablog.com