職場でも家庭でも「ほめ上手」という人がいる。相手を尊重することから始まるのが「ほめる」ということだと思うが、それを心理術としてまとめた面白い一冊があった。
■「相手を思うままに操る悪魔の心理術」なんだそうだ
今日ご紹介するのは、内藤 誼人さんの「すごい!ホメ方」という一冊。相手をほめるということを、色々な角度から徹底的に「技術」として取り上げた一冊だ。
内容(「BOOK」データベースより)
欧米流自己演出術である「パワープレイ」の第一人者として知られている著者が、仕事力・人間力が確実にアップする最強の心理作戦を紹介!仕事がデキる人だけに共通した「魔法のホメ技」とは…?相手のタイプ別ホメ方テクニックやさまざまな場面に応じたホメ方、あなたがホメ上手かどうかがわかる「心理テスト」なども収録。ビジネス交渉で敵を引き込む、好きな異性の心を掴む…など職場や家庭、人間関係等で役立つ実践的なノウハウが満載の一冊です!これを読むだけで、あなたのホメる技術は確実にアップします。
「ほめる」ということを「技術」として捉え、テクニックとしてのほめ方をいろいろなシーンで具体的に取り上げている。また、ほめる相手のタイプによってもほめ方が違うという考えで掘り下げたり、切り返された場合の対応法なども記述されている。
まさに「ほめるためのスキルアップ」が書かれている一冊。ほめることの大切さが分かっていながらもなかなか相手をほめることができない人にとっては、ほめることを学ぶことができてとても参考になるかもしれない。
一方で、素直に相手の意見を聞き入れて、素直に相手に感謝の気持ちや感嘆の言葉を贈ることができる人にとっては、やや反感を買うような内容かもしれない。それだけ「ほめること」を「技術」として割り切っている一冊だからだ。
例えば、「現状にホメるべきところが無いときには、将来のことをホメろ」だとか「その人の過去を引き合いに出してホメろ」というような項目を見ると、自分はそんなつもりでほめているんじゃないと反感を覚えるかもしれない。しかし、それもまたある種の気付きが生まれるのではないかと思う。
ある意味では「キッパリと割り切った一冊」であり、読む人の心構えひとつで薬にも毒にもなる一冊なのかもしれないなと思った。続編も出ていてなかなか売れているらしい。
すごい!ホメ方―職場で、家庭で、恋愛で…相手を思うままに操る悪魔の心理術 (廣済堂文庫)
- 作者: 内藤誼人
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2007/10/10
- メディア: 文庫
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■自分が意図的にほめられていないかチェックしたい
この本を読んで相手をほめることの大切さを感じたが、逆に自分自身が上手にほめられていることがあるかもしれないなと感じた。それは良い意味でも思い当たることがあるし、悪い意味でも思い当たることがあるからだ。
普段、誰かが自分を意識的にほめてくれる時には、「励ましてあげたい」と思ってくれる時と、「いい気分にさせて同意を得たい」と思っている時とがあるような気がする。
「励ましてあげたい」という気持ちでほめてくれるのは断然家族で、私が仕事のことで悩んでいたり仕事で疲れていたりすると、さりげなくちょっとしたことをほめてくれる。また、小さなことでも「いつもありがとう」と感謝の言葉をかけてくれる。それだけでもありがたい家族だなと思う。
逆に「いい気分にさせて同意を得たい」という意図があってほめられるのは、仕事の場面で多いような気がする。取引先などから言われることもあるが、社内でも同様のことがある。
上司、同僚、部下に関わらず、「○○さんにしかできない」だとか「さすが○○さんだね」という言葉には要注意。良い気になっていると、後からカラクリが分かってガクンと気分を落とすことにもなりかねない。
■本当に感心している人は簡単にはほめない
ほめられて気分が悪くなる人は少ないと思うが、「心にも無いことをほめることができる人」というのは、世の中に案外たくさん存在している。ほめ言葉を言われてウキウキしてしまい、後から何かの拍子にそれが単なるお世辞だったということに気付いてガッカリさせられるということも少なくない。
だからこそ、仕事の付き合いしかない人から出てくる”必要以上のほめ言葉”は「テクニックとしてのほめ言葉」だと受け取った方が無難だ。本当に自分に対して感謝していたり尊敬していたりする人がいたとすれば、そうそう気軽に複数人の前で「尊敬しています」などと言えるわけが無い。立場を逆にして考えればすぐにわかる。
そういったことを見分けるためにも、今日ご紹介した一冊を熟読してみるのも良いと思う。自分が使うために読むのではなく、相手の「テクニックとしてのほめ言葉」を見分けるためにも重要な一冊だと思う。
また、そういう敏感さを養うことで、真に自分のことを考えてくれている人を峻別することのできる力も養うことができるのではないだろうか。