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萩原浩さんの「オロロ畑でつかまえて」と「なかよし小鳩組」を一気読みして心を和ませる

 面白いなと感じた物語にであると、その作者が書かれた他の書籍を読みたくなる。それがシリーズ物の最新作であれば、シリーズの一作目に戻って読みたくなる。そういうことは皆さんもあるだろうし、そういった作品に出会えるととても嬉しくなる。

 先日読んで面白いなと感じた一冊が、”あとがき”を読んでシリーズ物だったことに気付き、急いで前作と前々作を買い求めて一気読みしてしまった。

零細広告社が舞台のユーモアと温かさが溢れるシリーズ

 書店の平台に積み重ねられていたので、思わず買って、読んで、感動したのが「花のさくら通り」という一冊。萩原浩さんの作品は今までも何冊か読んでいたが、この物語もユーモア溢れる内容ながら、読み終わった時にも心がほんわかと温かくなる作品だった。

 読み終わってから”あとがき”を読んでみると、ユニバーサル広告社を舞台としたシリーズ物の第3弾だということが書いてあった。登場人物に親しみを感じていたので、それではとばかりに以前の2作品も読んでみた。 

過疎の村が舞台の物語

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

 シリーズ第1作目は「オロロ畑でつかまえて」という一冊。後から知ったことだが、萩原浩さんのデビュー作であり小説すばるの新人賞を受賞した作品だ。現在の作風と同じくユーモア溢れる内容ながら、どこかしんみりとした温かいものを感じさせる物語だ。

 ユニバーサル広告社は社長を入れて4名という零細企業。社長の石井とコピーライターの杉山、アートディレクターの村崎と紅一点のアルバイト猪熊の4人は、石井が持ち込んでくる小さな仕事に取り組む毎日。

 毎月倒産の危機に見舞われている弱小広告社だが、超過疎化にあえぐ日本の秘境・牛穴村から突然町おこしの仕事が舞い込んでくる。ここぞとばかりに熱心に取り組む石井と社員達だったが、名産品もなければ名所・旧跡もない過疎の村では、町おこしをしようにもこれだというものがなかなか見つからない。

 そこで村の青年団とユニバーサル広告社とで、思いもよらない奇策で一躍有名になることを目論む。思い切った奇策が一旦は思いがけない効果を発揮が、ちょっとしたことから徐々にほころびが出始めて村を巡って大騒ぎとなってしまう。

  過疎に悩む村の青年団や村の人々、ユニバーサル広告社の面々やテレビ局の人々など、いろいろな人物が絡んで物語がテンポ良く進んで行く。コミカルな内容ながら要所要所で切ない出来事が挟まってきたり、思いもかけない人間模様が垣間見えたりと興味は尽きない。

 二転三転した物語は最後に大きなどんでん返しが待っているのだが、それも含めて読後の清涼感は抜群の一冊だった。

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

オロロ畑でつかまえて (集英社文庫)

 

ヤクザの組からのイメージアップ戦略に取り組む

なかよし小鳩組 (集英社文庫)

 シリーズ2作目は「なかよし小鳩組」という一冊。ユニバーサル広告社の面々が独特の個性を発揮しながら、難題に取り組むという物語だ。

 倒産寸前のユニバーサル広告社に舞い込んできたのは、「小鳩組」という会社からのイメージアップ戦略の仕事。今までにない好条件に社長の石井は小躍りして喜ぶが、蓋を開けてみると広域指定暴力団小鳩組のイメージアップ戦略だった。

 断るに断りきれずやむなく仕事を受けることになったユニバーサル広告社は、小鳩組の若き幹部から難題を吹きかけられながらも着実に仕事を進めていく。しかし、石井社長が相手の策に飲まれて無用な契約を交わしてしまったり、達成不可能と思われるような条件を提示されたりと無理難題が山積してしまう。

 一方、コピーライターの杉山は離婚によって離れ離れになった小学生の娘が部屋に転がり込んでくるなど、仕事もプライベートも一気に慌ただしくなってしまう。意地でも仕事を成し遂げようと決意した杉山は、かつてないぐらいのパワーで山積する難題を次々とクリアーしていくように見えたが、思いもよらない出来事によって窮地に立たされてしまう。

 ユニバーサル広告社の個性的な面々は第2作でも健在だが、1作目に比べて一人一人の個性が際立ってきていて、良い進めるうちに4人それぞれに感情移入をしてしまうようになる。

 物語はユーモア溢れる内容で進んで行くが、こちらも途中で登場人物それぞれの哀愁や喜びが織り交ざりながら展開し、読み終わった時には心の中が暖かいもので満ち足りる感覚がある。

 人と人とのつながりや感情というものが、読む側の心理とシンクロしてくるような感覚がこの作品でも見事だなと感じた。 

なかよし小鳩組 (集英社文庫)

なかよし小鳩組 (集英社文庫)

 

お気に入りの作品に出会うためには

 書籍の選び方は人それぞれだと思うが、私は新聞の書評やネットの書評を読んで選ぶことが多い。書店の平台に乗っている本は必ずチェックしているが、ネットで評判になっている本であれば迷わず買うことにしている。

 ただし、ネットの書評はそれこそ人それぞれで、中には良くなかった点を挙げ連ねているような書評もあるので鵜呑みにしないようにしている。書籍というのは感じ方が人それぞれなので、今ひとつだったという書評があったとしても自分にとっては良い中身かもしれないし、逆に絶賛されている本であっても自分には合わないということは良くあるからだ。

 それでも、自分と感性の合う人のブログに書かれた書評は割と合っているような気がする。自分が今まで敬遠していたジャンルの本であっても、そういったブログから得た情報で本を選び読んでみると、案外面白いなと感じることが多いからだ。

 いずれにしても買って読んでみないとわからないのだが、残念な結果になることもあれば思いがけずお気に入りになる本と出会えることあって、だからこそ読書はやめられないなと思う。