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「夫が邪魔 (徳間文庫)」新津きよみ

半世紀以上生きていると、自分の回りから居なくなれば良いのにと思う人が少なからず居た。学生時代の同級生であったり、働き始めてからの上司や同僚であったりと様々だった。邪魔さ加減の濃淡はあったが、中には顔を見るのも嫌だという人も居たのは事実だ。

言葉が過去形なのは、ここ数年はそういう「邪魔だ」と感じる人が居なくなってからであり、ありがたいことだなと思う。それはたまたまなのではなく、私自信がある程度年齢が高くなってきたことで、周囲とむやみにぶつかるということがなくなってきたからではないかと思う。自分の姿が相手にも反映するという、“鏡の法則”なのかもしれない。

昨年亡くなった母も、今年亡くなった父も、どちらも穏やかな晩年を過ごしていた。怒ることもなく、気の会う仲間と集い、趣味を楽しみながら夫婦で旅をする。そんな穏やかな晩年を過ごせたのはひとえに周囲の方々のおかげだが、夫婦仲良くいつも二人で語り合い、連れだっていたからだと思う。

一緒にいる時間を増やし、たくさん会話をする。それが夫婦円満の秘訣のひとつなのだろう。 

夫が邪魔 (徳間文庫)

新津きよみさんが書かれた「夫が邪魔 (徳間文庫)」は、夫を疎ましく思う妻が主人公の短編集。タイトルと表紙にドキッとさせられる一冊だ。

新津きよみさんは、人の心の奥にある闇や哀しさを巧みに描写される作家さんだが、さらにミステリーの要素も加わっているので一気読みしてしまう。今回も同様に一気読みしてしまった。

表題作の「夫が邪魔」は女性作家が主人公。著書が評判となり仕事が次々とやってくるが、夫は作家業に全く理解を示さず、食事の用意や家の掃除を当然のように要求する。夫の持つネジ曲がった価値観に振り回されるうちに、徐々に苛立ちが募って来る。そんな時に、住み込みでの家事手伝いを希望する熱烈なファンからの手紙が届く。ファンと作家との手紙のやり取りが続くうちに、事態は不穏な方向に進んでいくのだが。

このほか、「夫が邪魔だ」といわんばかりの短編が6話、全部で7話が収録されている。20年前の書籍が名前を替えて再登場したようだが、20年経っても面白い作品はやはり面白いままだなと感じた。

夫が邪魔 (徳間文庫)

夫が邪魔 (徳間文庫)