モノ作りの現場を見学することは、大人にとっても子どもにとっても貴重な体験だ。それが手作業の職人技だとなればなおさらだろう。金属加工が地場産業の新潟県燕市で、「磨く」という作業の見学だけではなく、職人さんから直接指導してもらえる施設がある。なかなか見ごたえがあり、貴重な体験ができるオススメスポットだ。
研磨の職人を育てる「燕市磨き屋一番館」
上越新幹線「燕三条駅」から東へ車で15分ほど走ると、工業団地の中に燕市磨き屋一番館がある。
ここは「金属研磨業に携わる後継者の育成、新規開業者の促進、技術の高度化による産地産業の振興および体験学習による金属研磨技術の普及」を目的に燕市が建設した施設で、燕研磨振興協同組合が事業運営を行っている。
工場見学と研磨作業の体験はワンセットになっており、電話かメールで申し込むことができる。この日は私たち親子だけの見学だったにも関わらず、ご担当の澤田さんにとても丁寧な説明とご案内を行っていただいた。とてもありがたいことだと感謝しきりだ。
会議室で燕市の産業に関する歴史や金属加工の工程、磨きに関する様々な事例などを丁寧に教えていただいた。分かりやすく丁寧な説明を行っていただき、また実物や写真などを交えて教えていただけるので、実に興味深くお話を聞かせていただいた。
その後、インカムをつけて実際に工房の中を見学させていただいた。工房は外部とつながっているため非常に暑く、大きな音を立てて動く磨き用の機械の前もすごい暑さだ。研修生の皆さんは3年間ここで研修を受講するそうだが、扇風機の風だけで黙々と磨きの作業を行っていた。
ここで磨かれた製品はそのまま市場で販売されるが、スプーンなどのカトラリーやマグカップ、工業機械の部品など様々なものが磨かれていた。
こちらは小型旅客機の翼を研磨したもの。風の抵抗を少なくするためと、上空で氷などが付着しないよう磨きのだとか。単に磨いて綺麗にするということではなく、製品の性能を上げるために「磨く」という作業が必要だということが良くわかった。
日本のモノづくりを支えているのは、機械だけに頼らず人の感覚と技術を研ぎ澄ませる作業が欠かせないということを知るとともに、職人さんの技術の素晴らしさを感じることのできる見学会だった。
体験を含めて1時間ほどのコースなので、親子で楽しく学ぶのにはうってつけの見学会だと思う。 実に真面目で楽しくて、興味深い見学会だ。
■「燕市磨き屋一番館」
所在地 燕市小池3633番地7
電話 0256-61-6701
メール 下記メールフォームに入力
http://www.tsubamekenma.com/inquiry/
休館日 燕三条産業カレンダーに掲載されている休日
(HPでご確認ください)
研磨作業を体験する
「磨き屋一番館」ではスプーンとタンブラーの磨き作業を体験することができる。 小・中学生はスプーン磨きを、高校生以上はビアカップ磨きを体験できる。その際には、実際に磨き作業を行っていらっしゃる職人さんに指導していただけるので、かなり本格的な作業体験だ。
私と息子は揃ってビアカップ磨きを体験させていただいた。高速で回転する研磨機に驚きながらも、「にいがた県央マイスター」の高橋さんに丁寧なご指導をいただき、ビアカップの外側をなんとか仕上げることができた。
磨くときには軍手を二重にはめるのだが、それでも持っているカップが熱くなるぐらい高温になる。これを一日中取り扱う職人さんというのは、それだけでもすごいなと思う。
なかなか貴重な良い体験をさせていただいた。
体験講座
・スプーン磨き体験(小人用) 800 円
・ビアカッブ磨き体験(大人用) 1,500 円
ステンレスのビアカップが飲み物をさらに美味しくする
今回ビアカップ磨きを体験させていただいたが、終了後に「ビアカップの底には泡立ちを良くするための筋が入っているんですよ」と教えていただいた。このビアカップにビールを注ぐと、そこの部分に付けられた筋が作用してきめ細かい泡が立つとのこと。これは困った。私はお酒が一切飲めない。
そこで、ノンアルコールビールを買ってきて、自分が磨いたビアカップに注いでみた。なるほど、今まで見たことがないくらいきめ細かな泡が立つ。ちょっとしたことだが、こういったところにも職人の技が生かされているんだなと感心した。モノづくりは、とことん奥が深い。
ちなみに、このカップはビール以外のものを入れても、とても美味しくいただくことができる。二重構造になっていないので熱い飲み物には使えないが、冷たい飲み物を爽やかに飲み干すには最適のカップだ。