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編集者の仕事に感動する一冊「クローバー・レイン」(大崎 梢)

 私は年間で180冊前後の書籍を読む。主に小説を読むほかビジネス本なども時には読み、コミックや雑誌などを含めると200冊を超える。

 いわゆる「本好き」の部類に入るとは思うが、決して本を読むことで何かを学ぼうとしている訳ではない。「家でテレビを見たり通勤時にスマホを見るのなら本を読みたい」というだけだ。だから、家ではテレビをほとんど見ないし、情報は主にラジオから得ている。

 私が本好きになったのは父親が本好きだった影響が大きい。分厚い小説類を読んでいたり 月刊の文芸誌を読んでいる父の姿には、近寄りがたい威厳のような一種独特の雰囲気があった。子ども心に良いなと思ったりしていた。

 そんなこともあって幼い頃から活字に親しんでいたが、本格的に本好きになったのは小学校4年生ぐらいの頃からだろうか。腕白坊主でガキ大将だった私はとにかく外で走り回るのが好きだったが、反面、図書館の整然とした静かな雰囲気も好きだった。

 外で走り回るのに飽きると一人で学校の図書館に行き、目に付いた小説などを適当に引っ張り出しては読んでいた。特に、冒険物やノンフィクション、SF物が大好きで、本を読み空想の世界に飛んでいくのが好きだった。きっと、外で走り回ることと空想の世界で駆け回ることは私の中ではイコールだったのだと思う。

 本を読むのはその頃からとても好きだったが、文章を書くのは逆に大の苦手だった。左利きを矯正して右手で字を書いていたので、字が思い切り下手だったことも文章が苦手になった要因のひとつだと思う。

 当時、今のようにパソコンやワープロがあればもうちょっと文章を書くのが上手な子どもに育ち、今でも文章が上手な大人になっていたかもしれない。

([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)

 小説を書くという行為は特殊な能力だと思っているが、出来上がった小説を「売れるもの」にするための編集者の仕事も特殊な能力だと思う。時には物語の流れや骨子を作者とともに考え、時には大胆に書き換えを作者に求めるという編集者の仕事は素直にすごいなと思う。

 すごいなと思う一方で、よくよく考えてみると編集者の仕事に関してあまり多くのことを知らないということに気がつく。小説家や書店員の仕事はある程度推測することができるが、編集者の仕事というのはいまひとつ漠然とした知識しかない。

 そんな「編集者」を主人公とした物語が、大崎梢さんの「クローバー・レイン」という一冊だ。主人公の彰彦は成績優秀で希望の大学に合格し、希望していた大手出版社の編集者としてすんなりと就職したという若者。

 ヒット作家の本を扱い、だからといってそれを鼻にかけるような性格ではないものの、他から反感を買うようなことのない動きをする如才ない若者だ。

  そんな彰彦が偶然出会ったのが、一時ヒット作を生み出していたもののその後は鳴かず飛ばずになってしまっていた作家の作品。原稿を読んで感動した彰彦は自社から出版することを心に決めて動き出すが、大手出版社の傲慢さが壁となり、また作家自身の煮え切らない態度もあって話がなかなか進まない。

 それでも孤軍奮闘する彰彦に徐々に味方が増えてきて、話が思いがけない方向に動き始めていく。

 大崎梢さんの作品には書店や出版社を舞台とした作品が多く、「配達あかずきん」や「背表紙は歌う」など本好きとしては見逃せない物語だ。今回手に取ったこの一冊も「本を愛する人々」の気持ちが丁寧に描かれていて、読後の爽やかさも最高だった。

 年間数え切れないほどの新刊が世の中に出てくるが、発刊に至るまでと発刊後の苦労というものがわかるこの一冊。編集者の仕事を通じて書籍を世の中に出すことの大変さがわかる一冊。書店に足を運んだときに、棚に並んだ一冊一冊の本を見る目が変わってきそうな一冊だった。

([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)

([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)

 

内容(「BOOK」データベースより)
大手出版社に勤める彰彦は、落ち目の作家の素晴らしい原稿を手にして、本にしたいと願う。けれど会社では企画にGOサインが出ない。いくつものハードルを越え、彰彦は本を届けるために奔走する―。本にかかわる人たちのまっすぐな思いに胸が熱くなる物語。

配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)

配達あかずきん―成風堂書店事件メモ (創元推理文庫)

 
背表紙は歌う (創元推理文庫)

背表紙は歌う (創元推理文庫)