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「イシマル書房編集部」(平岡陽明) 登場人物それぞれに共感できる一冊

「なりたい職業」があったのは何歳までだろう。人それぞれに目標にしていた職業はあると思うが、その職業に就けた人はそれほど多くはないだろう。だからといってそれが幸せかどうかということとは別問題で、想いとは全く違う職業に就いて成功している人も多い。 大切なのは「自分を必要としている場所があるかどうか」ではないだろうか。

人が人を引き寄せる物語 

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いつも立ち寄る書店で平積みになっていたのが、 平岡陽明さんが書かれた「イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)」という一冊。良質な書籍を世の中に出そうと頑張っている、神保町の小さな出版社が舞台だ。

■あらすじ

主人公の満島絢子は、かねてから編集者になりたいと思っていた。一念発起して仕事を辞めて、神保町の小さな出版社にインターンとして採用されることになった。子どもの頃から読書が大好きで、さらに速読と短期記憶が特技だという彼女にとっては、編集者は最適の職業だといえた。

しかし、インターとして通い始めたイシマル書房は、社員数名の弱小出版社で業績もかなり厳しい。今年の目標スローガンが「生き延びる」というのもそれを如実に表していた。

さらに、資金提供を受けている実質的な親会社からは、経営が改善されなければ株を売却すると通告を受ける。その危機に社長の石丸が考えた方法は、腕利きのシルバー編集者を雇用してヒット作品を発刊しようというもの。

一見ばかげた提案のようだったが、知人を通じて元腕利き編集者だった岩田が仲間に加わり、さらに一昔前にヒット作品を飛ばしたいわくつきの作家をも巻き込んで話が徐々に現実味を帯びてくる。しかし、活路を見いだしかけたイシマル書房の前に、次々と難問が立ちふさがってくる。

この物語には悪人が出てこない。もちろん"ちょっと嫌なやつ"というのは登場するが、決して悪人ではない。だからこそ、読んでいて嫌なストレスを感じない。疲れた心を癒すための読書には、こういう物語がピッタリだ。

かといって、内容が浅いわけではない。登場人物一人一人の過去にはそれぞれの物語があり、それらが微妙に現在の問題に絡んでくるところに読みごたえがある。そして迎える結末は、想定内ながらも意外というか、人の縁の素晴らしさと人の心の優しさを感じさせられる内容だった。

年末を控えて徐々に慌ただしくなってくる時期だが、だからこそこういったホッとする物語を読むのも良いだろうと思う。

イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)

イシマル書房編集部 (ハルキ文庫)