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少女たちの想いが交錯する連作短編「ガラスの麒麟」(加納朋子)

 ホッとする物語を読みたくなる時がある。そんな時は心が少しだけ疲れているのかもしれないし、慌ただしくてあえてゆったりとした時間が欲しくなる時かもしれない。

 加納朋子さんの物語にはそんな「ホッとさせてくれる」物語が多いが、今回手に取った一冊は哀しくも心が洗われるような一冊だった。

■人の心の闇を描いた作品

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 今日ご紹介するのは加納朋子さんの「ガラスの麒麟」という一冊。一人の美しい女子高生が、学校帰りに通り魔に刺殺されるところから物語が始まる。

【内容情報】(「BOOK」データベースより) 「あたし殺されたの。もっと生きていたかったのに」。通り魔に襲われた十七歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えた彼女の内面に隠されていた心の闇から紡ぎ出される六つの物語。少女たちの危ういまでに繊細な心のふるえを温かな視線で描く、感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞作。

【目次】(「BOOK」データベースより) ガラスの麒麟/三月の兎/ダックスフントの憂鬱/鏡の国のペンギン/暗闇の鴉/お終いのネメゲトサウルス

 この物語はいくつかの短編が集まって一つの話を作る連作短編という構成となっており、ひとつひとつの短編にはそれぞれ異なる主人公が描かれている。どの短編でも主人公の心の中にある悲しさや、いら立ちや、優しさなどが描かれていて、殺された少女の本当の姿も少しずつあぶりだされてくる。

 この物語のカギを握るのが、殺された生徒が通う女子高にある養護室の若い女性教師。悲しい過去の出来事のために精神的な負担で片足が満足に動かない彼女は、不思議な勘の鋭さでひとつひとつの事件を解決していく。

 そして、最終話になって今までの出来事がひとつにつながり、思いがけない結末を迎えることになる。「ガラスの麒麟」は何を表しているのかも、最終話になってようやくその内容が明らかになる。

 殺人事件という痛ましい出来事が冒頭で起こりながらも、それにまつわる人物の物語を読み進めるうちに、少女たちの心の奥にある暗さや悲しさや、そして純粋さが伝わってくる物語だった。

■心を疲れを取るサプリメントのような一冊

 著者の加納知子さんは「ささらさや」や「七つの子」など、数多くの連作短編を書かれている。そのどれもが読後に心の中に温かいものを育んでくれて、心の中にある日々の澱(おり)を溶かしてくれる。

 私はときどき本を読み終わったときに「心に効くサプリメント」という言葉を思い浮かべる。私にとっての読書は、疲れた心と体を解きほぐしてくれる妙薬で、じわじわと効いてくるサプリメントのような効果がある。

 いろいろなサプリメント(体と心に効く一冊)があるが、加納朋子さんの書かれる物語は、間違いなく心に清涼感を覚えさせてくれる物語だと思う。

 心と体が疲れたなと感じたら、加納朋子さんの書かれた物語を読むのはお勧めだ。  

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

ガラスの麒麟 (講談社文庫)

 
ささらさや (幻冬舎文庫)

ささらさや (幻冬舎文庫)

 
ななつのこ (創元推理文庫)

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