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「踏切の幽霊」(高野 和明)

東京では鉄道の高架化工事が進められていて、いわゆる「開かずの踏切」が徐々に減ってきている。しかし、私が通勤で使っている路線はまだまだ踏切が残っていて、1週間に何回かは遮断機が降りた踏切を無理に横断する人がいて、その度に電車が急停車して数分遅れるということが発生している。実に迷惑な話なのだが、それだけ時間に余裕のない人が多いのだろうし、それもあって事故が絶えないのだろうと思う。

むすこがまだ幼い頃に一家で住んでいた家の近くにも踏切があって、休みの日にはよちよち歩きのむすこを連れて電車を見に行ったものだ。カンカンという踏切の音がして遮断機が降りると「電車がやってくる!」とばかりにむすこの目が大きく見開かれて、ワクワクしている様子が手に取るようにわかった。時には運転手さんが軽く警笛を鳴らしてくれて親子で大喜びしたが、「踏切」は人が行き交う場所であり、見知らぬ人同士が一時的に向き合って佇むという不思議な場所でもあるなと思う。

踏切の幽霊

高野和明さんが書かれた「踏切の幽霊」という物語は、東京の下北沢にかつてあった踏切が舞台となった一冊だ。現在、この踏切は路線の地中化によって無くなってしまったが、都会なのに寂しい雰囲気の漂う踏切だったので小説の舞台としては最適なのかもしれない。

新宿に向けて進む私鉄の特急列車。終点までもう少しという場所にある踏切は、見通しも悪くて注意が必要な踏切の一つだ。そこを通りかかった時に踏切内に人影を発見した運転士は、急ブレーキをかけるも間に合わず通過してしまう。車両が停止してから慌てて確認に行くが事故をした痕跡は見つからず、首を捻りながら運行を開始することになるが、この踏切は時々同様のことが起きる不思議な場所だった。そんな不思議な踏切で踏切で撮影された一枚の心霊写真。婦人雑誌記者の松田は、読者から送られてきたこの心霊写真をもとに心霊ネタの取材を始めるが、よくある心霊写真ネタだと思っていたものがとある事件と結びついて思わぬ方向に事態が展開していく。

1994年冬の東京・下北沢を舞台にしたこの物語は、心霊者写真をもとにした単なるホラー小説では無く、世の中に普通にある「やるせなさ」や「哀しさ」を読むものに感じさせる一冊だ。読む者によっては読後の感想を「胸が暖かくなった」と感じるかもしれないし、あるいは逆に「考えさせられた」と感じるかもしれない。そんな、いろいろな要素が盛り込まれた一冊だと思う。オススメです。

踏切の幽霊

踏切の幽霊

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