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「悪いものが来ませんように」(芦沢 央)

子どもの頃から本好きで、やんちゃ坊主だった割には図書館で本を読むことも多かった。その頃もそうだし今もそうだが、お気に入りになった特定の著者の物語を次々と読むということが多い。というよりも、面白いなと感じた著者の作品をどんどん読みたくなるというのは、至極当たり前の欲求なのかもしれない。

中高生の頃には星新一さんの著書をすべて読み、それ以外にも遠藤周作さんや北杜夫さんの著書はすべて読んだ。今でも面白いと感じた著者の本は可能な限り立て続けに読むようにしている。

本の読み方としては色々な分野と著者の本を読むという方法もあるのだろうが、書籍に非日常やストレス解消を求めている私としては、少しでも自分が感動できる可能性が高いものを追い求める傾向があり、結果として同じ著者の物語をお腹一杯になるまで読み尽くしてしまうのだろう。 

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芦沢央さんも最近立て続けに著書を拝読させていただいている作家さんの一人だが、出会いは「悪いものが、来ませんように (角川文庫)」といいう一冊だった。これまでもミステリー物はたくさん読んできたが、この一冊は意外性に富んでいて思わず一気読みしてしまったぐらいだ。

 物語は、「奈津子」と「紗英」という二人の女性が軸となって進んでいく。奈津子は苦労をしながらも一生懸命子育てに取り組んでいる女性。一方、紗英は助産院に勤めながらも不妊と夫の浮気に悩んでいた。紗英は子どもの頃から奈津子を心の拠り所としており、何でも相談できる心強い味方だった。一方で、育児中の奈津子も社会や夫などから理解を得られず馴染めず、紗英を心の支えとしていた。そんなある日、紗英の夫が殺されてしまうという殺人事件が発生する。犯人は誰なのか、どうして殺人にまで至ったのか。真実が明らかになるにつれて奈津子と紗英の間に大きな変化が訪れるとともに、事件の以外な真相も明らかになってくる。

この物語は奈津子と紗英の心の動きが非常に綿密に描写されていて、読み進めていくうちにぐいぐいと物語のなかに引き込まれていく感覚を覚える。そして、ラストに訪れる結末は、事件の真相だけではなく奈津子と紗英に関する思いもよらない関係性に驚くことになる。

この本の帯には「読み返すこと必至」と書かれていたが、私もまんまと読み返すことになった。そして、著者の綿密な計算の上で書かれていた描写や内容に唸りながらも、すごい結末だなと清々しささえ覚えてしまった。

著者は結末を考えてから綿密にプロットを考えるのだそうだが、この一冊に出会ったことによってその後何冊も芦沢ワールドの本を読むきっかけとなったのだが、それはそれで本好きとしてはとても楽しい出来事になったのだ。

悪いものが、来ませんように (角川文庫)

悪いものが、来ませんように (角川文庫)

 

余談ながら

書店で本を購入するときには、オススメの言葉が書かれているPOPを参考にすることがある。手書きのPOPを見るとその書店が力強く応援しているという気持ちが伝わって来て、今まで読んだことのない作家さんの作品でも「一冊読んでみようかな」という気になってくる。

逆にPOPや帯などに「号泣必至」だとか「◯◯%の人が騙された」などと書かれていると、途端に興ざめしてしまうことが多い。物語は読む人の年齢や生活環境などによって感じ方が大きくかわるので、大袈裟な宣伝文句には反発を覚える人もいることを感じて欲しい。