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「カエルの小指」(道尾秀介)

読書好きで、年がら年中書籍を読んでいる。紙媒体の書籍が好きで、常に文庫本か単行本が手元にないと落ち着かないぐらいだが、出張や旅行の際には嵩張るのでいた仕方なくiPadに電子書籍を入れて持ち歩いている。常に数冊の書籍が手元にないとソワソワしてしまうので、タバコやお酒などの中毒症状と同じような状態なのだろうと思う。

妻に「暇があれば本を読んでいて話をしてくれない」と言われることもあるが(実際は話もたっぷりしているつもりなのだが)、そんな感じで年中書籍を読んでいると時々吸い込まれるように読み入ってしまう物語に出会うことがある。興味深く読むとか物語の主人公に傾倒してしまうというようなことではなく、文字通り吸い込まれるように物語の世界に入り込んでしまい、ふと気がついて時計を見るとあっという間に数時間が経っていたというような感じだ。

そういう物語に出会えることがでますます読書好きになってしまうのだが、時を忘れるほどのめり込んでしまう物語は、読み終わった時に「物語に対する満足感」と「読み終わってしまったという寂しさ」がないまぜになるという不思議な気分になる。それもまた、読書好きならではの感覚なのだろうと思う。そういう方は、案外多いのではないだろうか。

カエルの小指 a murder of crows カラスの親指 (講談社文庫)

道尾秀介さんが書かれた「カエルの小指 a murder of crous」も、時間が経つのを忘れて読み入ってしまった一冊だ。ただし、この物語が書店の平台に並んでいてとても面白そうだったのだが、その前に前作である「カラスの親指 by rule of CROW's thumb」を読んでみようと思って先に前作を読んだのは大正解だった。前作を読んでいたからこそ、今回も時間が経つのを忘れて読み入ったのだと思う。

前作から15年後。詐欺師から足を洗った武沢は、スーパーや電気量販店などで実演販売を行う実演販売士として生計を立てていた。生活は決して豊かではないが、一人暮らしをするには困らないぐらいの収入を得て穏やかに暮らしていた。

そんな武沢の前に現れたのが中学生のキョウ。武沢の実演販売にことごとくケチをつけてきたキョウだが、何回目かに会った時に突然実演販売の特訓をお願いされてしまう。それは自分を捨てた父親と、母を騙した詐欺師への仕返しをするために必要な行動だったのだが、キョウに指導をするうちに事態は徐々に大きく動き始め、武沢の昔の仲間を巻き込んで大掛かりな仕掛けへと展開することになる。

前作ではどんでん返しに次ぐどんでん返しで、あちこちに張り巡らされた伏線を一気に最後に回収される、読み終わってから思わず前のページを何箇所か読んでしまった。今回も同じようにどんでん返しが待っているのだが、そこにはある意味でのハッピーエンドが待っていて、生きていくのは辛いけれどもまんざら悪いことばかりじゃないなと思えるような結末だった。

巻末の後書きを読むと、前作を原作にした映画「カラスの親指 by rule of CROW's thumb」を見た著者が、映画に触発されてこの作品の一部に反映したのだということが書かれていた。原作と映画は設定やあらすじが若干変わることがあるというが、原作者に影響を与えるような映画というのも観てみたいなと思った。

ついつい引き込まれて、時間を忘れさせられたこの一冊。前述した通りぜひ前作を読んでからこの作品を手に取っていただきたい一冊だ。

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