手話を学び始めて3年半が過ぎ、それなりに読み取りや表現ができるようになってきた。学び始めてから毎年5月頃から翌年3月頃まで、ほぼ毎週手話講習会に通っているが、年間を通じて学んでいると少し気分が緩むときもある。語学は継続することが大切だと思うので、自分自身の励みにするためにも毎年10月に行われる手話検定を受講することにしている。
今回は10月に1級を受験したが、なんとか無事に合格証が届いてホッとした。「視覚言語」とも称される手話はその動きがとても美しいなと常々感じているが、少しずつながら身についてきていることが嬉しい。
コミュニケーション能力を試す検定試験
今年で11回目を迎えた「全国手話検定試験」。毎年10月に検定試験が行われ、年末のこの時期に結果が発表される。
全国手話検定の主催者は(財)全日本ろうあ連盟で、当事者団体として60年以上にわたりろう者の生活と権利を守る活動を行っている団体だ。検定は単語などの読み取りだけではなく面接もあり、手話を使ってのコミュニケーション能力向上に力点を置いた内容となっている。
手話というと「手話通訳者(士)」を思い浮かべるが、手話で表現することと通訳をすることとは全くの別物で、まずはコミュニケーションとしての手話ができるようになることが先決だろう。
そのためにも、検定試験を受けることで自分の実力を測ることができるとともに、勉強にもはずみがつき、学んで行こうというモチベーションの向上にも一役買ってくれる。
第11回全国手話検定試験(1級)の内容を振り返る
1級の検定試験では、「小論文」「読み取り」「面接」が行われる。
小論文
準1級までは法律関係等の筆記試験が行われたが、1級ではテーマに沿った小論文の作成が求められる。今年は「合理的配慮等」に関連したテーマだったが、単に感想や自分の考え方を書くのではなく、法律関係や社会での出来事などを盛り込んでいく必要があると思う。客観的な事実や解釈等をきちんと記述するためにも、日頃から聴覚障害に関する出来事には注意を払っておくことが大切だ。
また、字数が指定されており時間も1時間と制限されているので、闇雲に書き始めると途中で行き詰まったり辻褄が合わなくなったりしてしまう。実際に試験会場で終了間際に消しゴムを盛大にかけたり、頭を抱えて悩んだりしている人もいた。
練習段階から気をつけたいことは、まずは「起承転結」をメモしていくことだろう。大まかにどのようなことを書くか箇条書きにして、それを参考にしながら考えをある程度まとめて、それを提出用紙に書き込んでいく方が間違いがない。
一見すると手間がかかるように思えるが、実際には下書きメモを作ってから書き始めた方がはるかに効率良く文章としてまとめることができる。これは練習段階から慣れておいた方が良いだろう。
読み取り(設問)
読み取り試験は会場前面に設置されたスクリーンにプロジェクターで動画が映写され、それを読み取って解答欄から正解を選ぶ方式だ。1級では単語の読み取りは行われず、すべて会話を読み取ってそれに関連する問いに答えるという方法だ。
それぞれ同じ映像が3回ずつ繰り返されるので、落ち着いて読み取ればそれほど難しくはない。過去問題集や公式参考書に添付されているDVDを活用し、繰り返し読み取りの練習を行うことが大切だ。
また、問題と問題の間には30秒のインターバルがあるので、回答をマークし終えたらすぐに次の設問に目を通しておくというのも有効な方法だと思う。
面接
面接試験は各級共通で行われる試験で、ろう者と手話通訳者の2名を面接官として実施される。
試験開始時にその年のテーマが明示されるので、テーマに沿った内容を手話で表現していく。テーマに沿った話を2分間行ったら、続いてテーマに関しての質疑応答が面接官との間で行われる。指定された時間よりも早く終了すると「もっと続けてください」と先を促されるので、時間切れになるようにたくさん話を続ける必要がある。
面接で大切なことは「相手と会話のやり取りをテンポ良く行う」ということなので、上手に表現しようと思わず「面接官と楽しく話そう」ということを心がけたい。実際に私は手話表現を間違ったとしても、表情と口形でどんどん話を進めてしまう。
あまりにも手話表現を間違うとよろしくないと思うが、テンポ良く話をして盛り上がるのであれば多少の間違いは気にしない方が良いと思う。今年のテーマは「防災」に関することだったが、面接終了時に面接官から「大変だね」と言われたことがとても嬉しかった。
それぞれの試験は過去問題が発売されているので、それを買ってひたすらVTRを見たり過去問題を解いたりすることが先決だ。内容的なことよりも試験の方式に慣れておくことで、余裕を持って試験に臨むことができるようになる。
なお、一冊に全ての級の問題が掲載されているので「もったいないかな」と思うかもしれないが、徐々にステップアップしていって何年も使うことを考えると安いものだ。

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手話をどのように活かせば良いのか
手話検定をどうにか1級まで取得することができたので、さて来年に向けて何をやっていこうかなと思案中だ。
現在は、地域手話通訳養成コースに通っており、来年の春には地域手話通訳の試験を受けてみたいとは思っている。しかし、私レベルの手話では通訳として通用しないのは明白なので、まだまだ勉強を継続することが必要だ。
元々、ろう者と円滑にコミュニケーションを取りたくて手話の勉強を始めた。手話を学ぶ中で通訳としてのスキルと技術を学べば学ぶほど、単に手話を使ってコミュニケーションをとることができるだけではダメなのだということを知った。英語が流暢に話せても同時通訳ができる訳ではないというのと同じだろう。
これからは今まで以上に聴こえない人とコミュニケーションをとる機会を作り、生きた手話を少しずつでも身につけていきたいと思う。