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「絶対正義」(秋吉理香子)

「正義の味方」とは、悪を懲らしめて弱きを助けるもの。あるいは、突如襲いかかる怪獣や妖怪などに、敢然と立ち向かうスーパーヒーロー。そんなイメージが浮かんでくる。確かにそれは間違ってはいないが、かといって正解という訳でもない。物事は見る方向によって捉え方が違うし、法律を守っていれば正しいとは限らないからだ。

実例のひとつとして、知人の職場に居るという非常に正義感の強い社員のことを思い出した。彼は非常に真面目で正義感が強く、仕事もしっかりと行なっていて信頼も厚い。しかし、周囲から見て彼の難点は「他人にも正義を求める」ということだった。

出張用の航空チケットをクレジットカードで買った同僚に対しては「カードに付くポイント分は会社に返すべきだ」と迫り、期日を過ぎた申請に関しては頑として受け取らない。社内的に運用として容認されていると話しても、それなら会社の規定が悪いのでそれを変えようと主張する。言っていることは間違っていないのだが、間違っていないだけに窮屈で気分が悪いと言う話になったようだ。

その後、彼がどうなったのかは聞いていないが、本人より周囲が疲弊していたのだろうと言うことは容易に察することができた。正義の味方も含めて、何事もほどほどが一番であり容認するという気持ちも大切なのだろうと思う。

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秋吉理香子さんが書かれた「絶対正義 (幻冬舎文庫)」は、法律や秩序を守ることを正義とする女性が主人公の物語だ。いや、彼女が主人公というよりは、彼女取り巻く人々がそれぞれ主人公にもなっているという物語だ。

正義を貫くことを絶対的な行動規範としている範子は、高校生の頃からその強烈な個性を発揮していた。授業中の手紙回しをとがめることなどは些細なことで、法を守るためなら教師であろうが同級生であろうが、手加減することなく正義を貫いていく。そんな範子には4人の友達がいたが、大人になってからもちょっとしたことで範子と関わっていく。関わったことで助けてもらうシーンがありながらも、それ以上に自分の身や家族に災いが降りかかってくる。追い詰められた彼女たち4人は共謀して範子を殺害してしまう。その事を誰にも知られずに過ごしてきたが、殺害から五年後、死んだはずの彼女から一通の招待状が彼女たちに次々と送られてきた。はたして、招待状の意味するものは何なのだろうか。

主人公の範子は一見するととても強烈な性格のように感じるが、大なり小なりこういった考え方や行動をする人は実在するだろう。小説だからこそ没頭できる点もあれば、現実にも有りうるという恐さも感じる。場面展開の速さも含めて、一気読みしてしまった一冊だ。

「正義は必ず勝つ」ということではなく、ルールを守りながらもそこに人間らしさを加えることが大切なんだなと感じた。

絶対正義 (幻冬舎文庫)

絶対正義 (幻冬舎文庫)