万年筆を使い出すと、筆圧をかけない独自の書き味が癖になってしまう。それもあって安価な万年筆から使い始めたが、徐々に色々なタイプの商品を使うようになった。万年筆は奥が深いのでキリがなさそうでちょっと怖い。
今回使い始めた万年筆は軸が短めでコンパクトだが、木のぬくもりが手に優しい素敵な商品だった。
軸が木製で短めの万年筆
先日入手したのがパイロットの「レグノ89S」という万年筆。軸の長さが他の万年筆より少し短くて、コンパクトな印象を与えてくれる商品だ。
キャップを閉めた状態では全長が120mmとショートサイズだが、キャップを後ろにつけると135mmまで伸びるので手の平にしっくりとくる感じがする。全体的なバランスも良くて、力むことなく文字を書くことができる。
胴軸とキャップの部分には、コムプライトと呼ばれる素材が使われている。コムプライトは積層強化木と呼ばれており、数ミリの薄い木材板に樹脂を含ませ何層にも重ねた素材だ。通常の木材より軽いのも特徴の一つだろう。
手触りは普通の木材よりもやや硬い感じを受けるが、木目も美してくて手触りも良い。また、コムプライトは水をほとんど吸収しないので、水分で強度が低下することもないようだ。
手触りが良いのでついつい触りたくなり、文字を書くために取り出すこともあれば、触りたいのでレグノ89sで文字を書くということもある。手触りの良さは愛着を湧かせるための一つの条件かもしれない。
14金のペン先が書きやすい
レグノ89sのペン先には14金が使われており、程良いしなりがあって書き心地も柔らかい。今回選んだのは中字のペン先なので、手紙を書く時などには文字の線が微妙に太さが変わって良い。
カリカリとした書き心地のペン先も軽快で好きだが、柔らかい書き味も気分がゆったりとして良いなと思う。個人的にはこのペン先の形状も好みだ。
手頃な価格の万年筆で書き味を楽しむ
今回ご紹介したレグノ89sは、実勢価格で一万円を切る価格設定になっている。最近では数百円の万年筆も登場していて、数千円出せば普段使いにぴったりの商品もある。
それでも一万円前後の万年筆というのはワンランク上の書き心地なので、「万年筆は案外書きにくい」と感じている方にはオススメの価格帯だ。これが数万円の万年筆となると少しハードルが高いが、この価格帯ならそれほど買って損はないだろうと思う。
ワンランク上の書き心地を求めて、ちょっとだけ贅沢をしてみる。こうやって文房具好きは、万年筆にはまっていくんだろうなと自分自身を振り返ってそう思ってしまう。それがまた心地良いので困ってしまうのだが。