起業するというのはかなりの努力と熱意が必要だが、パッケージデザインなどを工夫することによって老舗の味を復活させ、 ビジネスとして成功をおさめた方がいる。老舗の味を復活させた30才台中盤の一人の女性。その熱意と発想はすばらしい。
■パッケージデザインが素敵なおかき類
品質は高いものの地味で売れない米菓工場の商品を売るため、 商品企画・販売の会社「つ・い・つ・い」を立ち上げたのが遠藤貴子さんという一人の女性。味付けやパッケージを工夫することで売上高を毎年伸ばしている。
遠藤さんは学生時代からネット販売ビジネスを手がけ、 卒業後も金融機関や不動産会社に勤務した後に、 新潟県で「品質は高いが売れていない」という米菓工場の商品を売ることになった。
米菓工場の商品を売るために会社を設立。 高級品種の材料を使って職人さんが丁寧につくる米菓は、味も良くて贈答用にも適した商品だった。売れないのは商品力ではなく企画力だと考えた遠藤さん。贈答用として喜ばれるパッケージや「日本好きの外国人」がデザインしたパッケージを使用し、 次々と売上げを着実に伸ばしてきた。
例えば竹かご入りのあられセットは、 「ちょっとした贈り物」用として販売されているが、自宅のおやつではなく「贈答用」として購入したくなる商品に仕上がっている。竹のもつ暖かさと家紋の持つ厳粛さが合わさって、とても落ち着いた素敵な商品だなと思う。
詰め合わせ用の紙箱は日本に住むフィンランド人のデザイン。 日本の「家紋」をイメージして作られた商品だが、こちらも家紋の厳粛さがスマートなデザインでとても素敵なパッケージに仕上がっている。
「自宅用のおやつ」であったり「ちょっとした贈り物」であった米菓を、「きちんとした贈答用品」として購入されるような商品に成長させたのは、消費者の心をつかむ温かみのある素敵なパッケージ開発があったからこそだ。
■買いたくなる商品には良いデザインと物語が必要
商品を販売するときに品質や性能を良くするというのは当然のことだが、それと同時に商品そのものやパッケージのデザインも重要だ。デザインは商品価値を上げる。
以前ご紹介した新潟県のつばめキャンドルの例をとってみても、単なるキャンドルではなく商品自体に創意工夫を凝らすろともに、パッケージシールも統一したイメージをもっている。
「品質が良い」ということや「作るのに苦労をした」というのは作る側の想いだが、それが商品の売れ行きにダイレクトにつながるとは限らない。買ってくださる方は値段と品質と使い勝手を考えて購入するかどうかを決めるが、もうひとつ大切なことは直感的に「買いたい!」と思うかどうかではないだろうか。そのためには商品を一目見たときに感じるイメージは大切だ。
パッケージを工夫したり商品のデザインを素敵なものにすることで、 たくさん並ぶ商品の中でまずは自分の商品を目に留めてもらい、それを手に取って性能や使い勝手や品質をしっかりと確認してもらう。買ってもらうためにはそういったプロセスまで考えたい。
また、パッケージだけではなく商品自体のコンセプトというか、商品開発の背景までもを含めた「物語」というのも大切だ。前出の米菓では「品質は良いが売れない新潟の工場の商品」という前提があり、「日本の伝統的なお菓子を絶やしたくなかった」という想いが物語として流れている。
無理に物語を作ってしまうと捏造になってしまうが、「商品開発にかけた情熱を商品で表現する」ということは、 買ってくださる方に実際の商品価値以上の価値を感じてもらえる。そういった開発側の「想い」まで含めて「良い商品だな」と思ってもらえることが、最終的には商品としての価値になるのではないかと思う。
何事も「Passion(情熱)」が大切だ。