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「キャロリング」(有川浩)、人と人との繋がりが素敵な物語

年末年始にはテレビでもラジオでも「占い」が大きく取り上げられる。来年はどうなるのか、今年はどんな年になるのかなど、情報番組やワイドショーなどで大々的に特集されることもある。また、世界情勢や日本国内情勢がどうなるかという大きな話から、生まれ月によってどんな年になるのかという極めて個人的なことまで幅広く占われている。自分の人生を振り返ってみても、良いことと悪いこととは裏表だったりする。それはわかっているのだが、良いことばかりが続いてくれるのを願うが人情というものだろう。

私の好きな故事の一つに「人間万事塞翁が馬」という言葉がある。詳しい説明は省かせていただくが、意味としては「幸運だと思ったことが不幸の元であったり、逆に不幸だと思ったことが実は幸運だった。物事の幸不幸はその事柄だけでは一概に言い切れない」ということだ。そう考えることで幸運なことに出会っても有頂天になることなく気を引き締め、不幸なことに出会っても必要以上に気分を落ち込ませることを防ぐことがでいる。

外的要因に振り回されることなく、自分の周りで起きた出来事を自分なりに消化する。そうすることで、色々なことが良い方向に動いていくような気がする。

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有川浩さんが書かれた「キャロリング (幻冬舎文庫)」は、人と人とのつながりや絆や、そういったことを超越した運命のようなものを感じさせてくれる物語だ。


主人公は子供服メーカーに営業として勤める大和俊介。社長を入れても社員数5名という零細メーカーだが、丁寧なものづくりと独自のセンスで小さいながらも堅実な事業運営を行ってきた。また、子供服メーカーなのに学童保育も運営しており、社会的な責任を少しでも担おうという前向きな姿勢も社会に受け入れられてきた。
しかし、得意先の倒産によって資金繰りに困窮し、クリスマスに倒産することが決まってしまった。社長の意向により取引先への支払いや従業員への給料はきちんと行えることになったが、それ以上事業を継続することが困難になったのだ。
クリスマス倒産へのカウントダウンを行う中で、最後まで学童に通っていた小学生の航平が、両親の離婚を止めたいという願いを持つ。その願いをかなえるために、同僚で元恋人の柊子とともに航平の父親に会いに行く。ちょっとしたことだと思っていた人助けが、思いがけず大きな事件へとつながっていくが、その中で思いがけず人の心の奥深くにある優しさや哀しさを知ることになる。

 

主人公が勤務する子供服メーカーが倒産するまでを期限として、主人公を取り巻く人々の過去や性格や想いなどが交錯して物語が進んでいく。一見、何の関係もなさそうなことが問題解決に関係していたり、逆に問題を複雑にしてしまう。そんなちょっとしたことが実に良く考えられているなと、物語を読み進めながら感心してしまう。さすがに有川浩さん、ちょっと変わったラブストーリーが天下一品だ。
そして、読者の「こうなると良いのに」と思うことを、少し裏切りながらもほぼその通りの結論に向かっていく辺りもすごい。そういった部分が、読者が物語の登場人物に対して共感を覚えながら読み進めていける理由の一つなのだろう。
そして読後の満足感と爽快感とともに、人と人との絆や運命の素晴らしさを感じさせてくれる温かさも感じられて良い。生きていくことは辛いことや厳しいこともあるのだが、当然のように楽しいことや幸せなことも同じようにある。それに気づくかどうかは本人次第だということも、この物語はそっと押してくれているような気がする。
心が疲れた時に読むと、じわっと元気が出る素敵なサプリメントのような一冊だ。

キャロリング (幻冬舎文庫)

キャロリング (幻冬舎文庫)