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「逢魔が時に会いましょう」(荻原 浩)、妖怪達がほのぼのと登場する心温まる一冊

昔はいたるところに暗闇があった。月が出ていなければ一寸先も見えないぐらいの暗闇で、逆に満月が出ていると月影が色濃く道端に広がっていたものだ。昔と言っても私が子どもの頃なので、今から40年から50年ほど前のことだ。九州の田舎町で育った私にとって闇は身近なものであり、そこには妖怪であったり幽霊であったりという人知を超えた何かが棲んでいた。 

 私が子どもの頃に「ゲゲゲの鬼太郎」がテレビで初めてアニメ化されたが、そこに登場する妖怪達は当時の私には架空の存在ではなかった。妖怪達は身近に潜む存在であり、動物図鑑と同じような感覚で妖怪図鑑を見ていたことを思い出す。幽霊も怖かったが人とは成り立ちの違う妖怪はさらに怖くて、出没する場所や撃退方法などを本気で覚えたものだ。

今となっては懐かしい思い出だが、心のどこかで今でも妖怪を信じている自分がいるのも事実だ。

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萩原浩さんは心温まる物語を書かれる方で、今まで何冊も読ませていただいては読後の爽快感や安心感を味わわせていただいた。今回読ませていただいたのは、先月2018年4月に発刊された「逢魔が時に会いましょう (集英社文庫)」という一冊。妖怪や精霊などを探して歩くという連作短編集だ。 

大学4年生の高橋真矢は、映画研究会に在籍しながら映像の世界で活躍することを夢見る女子大生だ。そんな彼女の映像制作力を買われ、大学で民俗学を専攻する布目准教授の助手として現地調査のアルバイトを行うことになる。

最初に向かったのは岩手県の遠野。“座敷わらし”を撮影するために様々な場所を訪問するが、数えても数えても実際の人数よりも一人多い現象に出会う。そのうち、布目准教授の誘導でついに座敷わらしが判明するが、、、そのほかにも河童や天狗という、昔から日本に棲む妖達の正体を探して二人は色々な場所を訪問していく。

 座敷わらし、河童、天狗はそれぞれ子どもの頃に「会いたくないけど実在すると信じていた」存在だ。それらが、物語の中で様々な解釈や現象として登場し、ワクワクしながら読み進めさせていただいた。

その解釈や現象の数々がとても温かいエピソードとして登場するのが、さすがに荻原浩さんが書かれる物語だなと感心した。また、物語に登場する妖達のエピソードだけではなく、真矢と布目のほんわかとしたラブストーリーも気になるところだ。

気負わずゆったりとした気持ちで読むことができ、読後には心の中に爽やかさと温かさが残る素敵な一冊だった。ゴールデンウィークに入ってすぐに読み始めた一冊だが、一晩で読み切ってしまった一気読み必至の一冊でもある。 

逢魔が時に会いましょう (集英社文庫)

逢魔が時に会いましょう (集英社文庫)