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文房具類の登場場面が印象的な小説「嫌な女」(桂 望実)

文房具好きでジャンルを問わずいろいろな本を読むが、作品中に文房具類が頻繁に出てくると単純に楽しい。今回読んだ小説も、所々に自分が使っている文房具などが登場する一冊だった。

弁護士と詐欺師の双方が主人公の物語

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文房具が印象的に登場するのが、桂望実さんの描かれた「嫌な女 (光文社文庫)」という一冊。2013年に発行された物語だが、映画化されて2016年6月に公開されたのでご存知の方も多いだろう。

物語は、主人公である女性弁護士の徹子が、自由奔放な遠縁の夏子からのトラブル収集の依頼を受けることから始まる。どちらかというと徹子視点での物語進行だが、キーとなる出来事は夏子が中心だ。

人付き合いの苦手な徹子が、ことあるごとに夏子から問題を突きつけられて巻き込まれていくというストーリー展開になっている。

幼い頃から自分の気持ちを表に出さずに押さえ込んできた徹子と、生れながらに詐欺師的な素質のある夏子。育った環境も性格も考え方も正反対の二人だが、夏子の起こす事件を通じて徹子の心が徐々に変わっていく。

 物語のスタートは、弁護士資格を得た夏子が働き始めて間もない頃のこと。疎遠だった夏子から、突然「婚約解消に伴うトラブル解決」の依頼が届く。婚約相手やその両親、近所の人々から話を聞くうちに夏子の特異性をまざまざと感じる徹子。それと同時に、原告と被告、そして周辺の人々から話を聞くことの重要性を知ることになる。

それから5年後、年上の研究者と結婚して子どもも設けたという夏子から、今度は「行きつけの美容院とのトラブル解決」の依頼が入る。弁護士事務所での経験を積んできた徹子は、それまでに身につけた知識や経験を生かしてトラブル解決に当たる。ここでも、夏子の人並み外れた詐欺師的な能力を知ることになる。

さらに年月が過ぎて互いに30代に入った頃、またしても夏子から「遺産相続のトラブル解決」の依頼が入る。様々な人々の心の中にある寂しさや哀しさ、親子の間の感情のもつれなどを知り、徹子は今までと違った夏子の姿を知っていく。

遠縁にあたるというだけで性格も生い立ちも違う二人の女性が、互いの人生に向き合いながら物語が進んでいき、やがて感動的なクライマックスを迎えることになる。

読み始める前に弁護士と詐欺師という設定を読み、強い弁護士が弱い詐欺師を諌めていくような内容だと思った。しかし、読み始めた途端にその先入観はガラガラと崩れ、人間の強さと弱さ、心の中にある悲しみや葛藤などを描いた作品なのだということに気づいた。

物語は一つ一つの事件をキーにして進んでいくが、様々な人生模様を描くことによって読者自身の心の中までぐっと手を突っ込んでくるような感覚を覚えた。また、「老いていくこと」にどう向かい合うのかということも考えさせられるなど、久しぶりに心の真ん中まで届いてくるような物語だった。

いつまでも心に残る一冊だと思う。

嫌な女 (光文社文庫)

嫌な女 (光文社文庫)

 

随所に出てくる文房具類

物語自体が素晴らしいのは言うまでもないが、弁護士である徹子が文房具好きだという設定にも個人的に惹かれた。

物語の前半で「私にはなんの趣味もないが、文房具だけには弱く、新しい物を見れば、買わずにはいられなかった。文房具には知恵と工夫が詰まっているので、眺めるだけでも楽しく、使えば、思わず感心してしまう。 」という一文があり、そうだそうだと心の中で相槌を打ってしまった。

持ち歩いている手帳がモレスキンだったり、出張中に使っていたボールペンが仕掛けつきのものだったりと、文房具好きとしては物語の中に飛び込んで覗いてみたいような気になってしまう。

物語の後半では、徹子が周囲から「趣味は文房具」と言われるまでになっていることには大いに共感を覚える。かといって、文房具がやたらと登場するわけではなく、文房具好きだということが徹子の人生にさりげなく添えられているという点も良い。

思わず文房具が欲しくなるような物語といえば、雫井脩介さんの「クローズド・ノート (角川文庫)」や小川糸さんの「ツバキ文具店」を思い浮かべる。どちらも文房具好きにはたまらない小説なので、まだ読んでいらっしゃらない方には是非オススメしたい物語だ。

クローズド・ノート (角川文庫)

クローズド・ノート (角川文庫)

 
ツバキ文具店

ツバキ文具店