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おやこでポレポレ《文房具好きブログ》

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スパイの暗躍を描いたワクワクする一冊「ジョーカー・ゲーム」(柳 広司)

読書

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 私が子どもの頃、スパイ手帳なるものが流行ったことがある。 水に溶ける紙で作られた手帳や暗号メモ、特殊なインクで作られたペンなどが入っていたように記憶している。

 昭和40年代のことだが、テレビで「スパイ大作戦」というアメリカのテレビドラマが大人気だった時代なので、男の子であればかなりの確率で「スパイになってみたい」と思っていたのではないだろうか。番組の中ではテープレコーダーから指令が流れ、最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」という声とともにテープが煙となって消えるという場面にもワクワクした。

 当時の子どもたちが想像していたスパイは、盗聴器などを巧みに捜査して情報を入手し、場合によっては銃を乱射しながら敵のアジトを制圧するというイメージだった。大人になってみるとそれはテレビでの空想であり、実際にはとても地味で目立たない活動が戦争中には行われていたことを知った。

 それでも「スパイ」という言葉を聞くとどこか謎めいた雰囲気をイメージするのは、子どものころのテレビ番組の刷り込みによるものなんだろうなと思う。

■思わず一気読みしてしまうスパイ小説

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

 今日ご紹介するのは柳広司さんが書かれた「ジョーカー・ゲーム (角川文庫)」という一冊。映画化もされていて現在ロードショーが行われているので、映画の方から知ったという方もいらっしゃるのではないだろうか。

 物語の舞台は架空の第二次世界大戦直前の日本。陸軍に「D機関」と呼ばれるスパイ養成機関が秘密裏に作られたところから物語が始まる。難解な試験をパスして集められた面々は、ずば抜けた知識と体力と精神力を持ち合わせた面々で、難解な事案をやすやすと片づけていく。

 スパイというと派手な活躍をイメージするが、物語に登場する人物は空気のような存在となって動き、人知れず独自の方法で目的を達成していく。アクションものを予想して読み始めたが、実に緻密なプロットによって進んでいく物語を読んでいるうちに、すっかり熱中してしまい一気に読み切ってしまった。

 物語の中にはアクションシーンはほとんど登場せず、D機関の設立者である結城中佐についても特殊な能力を秘めながらも実態は謎のままとなっている。そう、この物語には随所に「謎」が散りばめられていて、それがこの物語を一層魅力的なものに仕上げているのだと思う。

 一つ一つの物語が短編として綴られていて、それらを一冊読み終わることによって全体を流れている大きな謎につながるような連作短編的な読み方をさせてくれる一冊だ。映画化されるだけではなく続編を含めてシリーズ4冊が発刊されているので、しばらくは書店の平台をにぎやかに飾ってくれるのではないかと思う。

 昔スパイにあこがれた年代が読んでも楽しいだろうし、若い人が読み進めても楽しめると思う。戦争の理不尽さをも描き出した、読めば読むほど入り込んでしまう奥深い一冊だ。

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)