「聴こえない」ということがテーマとなっている物語はテレビや小説でいろいろとあるが、それを肯定的に受け止めていきながら進んでいく素敵な物語がある。手話を習い始める前に読んだこの一冊は、いま読み返しても感動を呼ぶ素敵な一冊だった。
■ラブストーリーの名手が描く素敵な物語
今日ご紹介させていただくのは有川浩さんの「レインツリーの国」という物語。若者たちが繰り広げる、心温まる感動の一冊だった。
きっかけは中学生の頃に読んだライトノベルズ。
主人公の向坂伸行は大学を卒業して三年目の社会人。
昔読んだ忘れられない本の感想をネットで探していると、
自分の感性にぴったりと合う内容が書かれたサイトに出会った。
感想を綴っている”ひとみ”とメールでやり取りをするうちに、
どうしても直接会って話をしたくなったが、
彼女はどういうわけか会って話をすることには消極的だった。
それでもようやく会えることになり、
少しだけちぐはぐな会話ながらも楽しい時間を過ごしていった。
しかし、彼女には伸行と会うことに消極的になるある理由があった。
この本を最初に書店で見かけた時に、「レインツリーというのは何なんだろう?」と気になった。調べてみたら”レインツリー”はアメリカネムノキという樹木の別名で、「歓喜」「胸のときめき」という意味があるんだそうだ。
タイトルのとおり、この物語は胸がときめくとても素敵なラブストーリー。主人公が知り合った女性ひとみが背負っている「聴こえない」ということが、物語の中で非常に切ないながらも感動のラストにつながるキーワードとなっている。
互いに惹かれ合いながらもさまざまな誤解や心の葛藤が起こり、それでも互いを理解し合おうという二人の姿。そこには静かな感動を覚える。
著者である有川浩さんがこの題材を取り上げながら、それでも読後に爽やさを感じさせるというのは、さすがにラブストーリの名手だけのことはあるなと感じた。
個人的には主人公の関西弁が冒頭の部分では少し気になったが、読み進めていくうちにグイグイと引き込まれてしまい、一気に読み切ってしまったこの一冊。短い物語だが読んでみる価値はあると思う。
■心温まる有川浩さんの世界
有川浩さんは「ありかわ ひろ」と読む女流作家さん。お恥ずかしい話しながら、最初は男性の作家さんだと思っていた。
有川浩さんの作品で初めて読んだのは「塩の街」という一冊。自衛隊が出てきて殺伐とした設定ながら、心温まる温かいラブストーリがとても素敵で、一気に読んでしまった。良い年をしてラブストーリーでもないが、心温まる物語を読むことが好きな私はこの本を読んだことがきっかけとなって、すっかり有川浩ワールドに引き込まれてしまった。
最近では「空飛ぶ広報室」や「図書館戦争」、「阪急電車」などがテレビドラマ化、映画化されたのでご存知の方も多いと思うが、デビュー作三部作でもある「塩の街」「空の中」「海の底」は有川浩さんらしい素晴らしい物語だと思う。
機会があればぜひ読んでいただきたい作品ばかりだ。
- 作者: 有川浩,徒花スクモ
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