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NHKドラマ「デフ・ヴォイス」/感動の原作を再びご紹介

聴こえない人にも聴こえる話題となったドラマ「デフ・ヴォイス」。昨日後編が放映されて心に響く内容でしたし、すでに続編を期待する声が上がっていますが、8年前に書いた原作の感想をリライトしてご紹介させていただきます。初めて読んだ時の感動を再び思いだしました。

手話を通じて社会の在り方をも考えさせられる一冊 

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

手話仲間に紹介された読んだのが、丸山正樹さんの「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)」という一冊。手話での会話がふんだんに出てくるこの物語は、手話を学んでいる人には手話通訳士の働きぶりが興味深いと思うし、手話がわからない人でも”ろう者”の置かれている現状がわかる興味深い一冊だ。

 警察関係の仕事についていた主人公の荒井は、自らの正義感が仇となって職場を追われ、さらに結婚にも失敗するという過去を持つ中年男だ。生活するために働き口を探す荒井は、本人的には不本意ながらも手話通訳士の資格を取得し、瞬く間に人気のある手話通訳士として活動するようになる。

 荒井は自らの生い立ちから自然と手話が身についたのだが、16年前にろう者が起こした殺人事件に関わることになり苦い経験をしていた。しかし、再び16年前の殺人事件と関連した新たな殺人事件が発生し、意図せず新たな殺人事件の謎に立ち向かっていくことになってしまう。

 果たして16年前の殺人事件は自首したろう者が本当の犯人だったのか、新たな殺人事件との関連はあるのか。そして、16年前から荒井の中に残っていた苦悩を解決する術があるのか。事件の真相を追う荒井の前に、事件の真相を阻もうととする見えない壁が立ちはだかってくるが、徐々に真相に近づいていく荒井の前に意外な事実と16年前の事件の謎が明らかになってくる。

手話の勉強をしている者にとっては、手話を流暢に使う手話通訳士は憧れの存在だ。しかし、この物語を読み進めるうちに、単に「手話が上手だ」というだけでは本当の意味でのコミュニケーションはできないということを知ることになる。

この物語を読み進めていくうちに、警察での取り調べや法廷での裁判などにおいて、手話通訳士が重要な役割を担っていることが徐々にわかってくる。だからといって、単にろう者の置かれている立場や社会的な課題に深く触れるのではなく、「聴こえない」ということが事件にどのように関連してくるのかなど、様々な伏線が随所に張り巡らされていて非常に興味深い。

福祉関連施設の持つ課題や社会を支えるNPOの活動、CODAと呼ばれる方々の苦悩や手話通訳士の置かれている現状などを的確に押さえつつ、親子の愛情や人と人との絆をも描く本格的な社会派ミステリー作品だ。

読後は心の中に温かいものが流れてきて、思わず一気読みしてしまったこの一冊。文庫化されて書店の平台に並んでいることが多いので、皆さんにもぜひオススメしたい一冊だ。 

ろう文化や手話にまつわる様々なことを考えさせられた

この物語のタイトルとなっている「デフ(deaf)」という言葉は「ろう者」を示す英語だが、英語圏では最初の一文字を大文字で表記することによって「Deaf=手話を母語とするろう者」を指す言葉として使われているようだ。単に手話を使うかどうかではなく、ろう文化というものの存在がしっかりと描かれているという点でも興味深い。

 また、主人公は「両親がろう者で本人が聴者」の「コーダ(Coda,Children of Deaf Adults)」という設定だが、音声言語を習得する前に手話を習得することや親との文化の差に悩む子どもの心の動きなども丁寧に綴られている。

手話を学ぶ身としては、手話に興味がある人にも興味がない人にもぜひ読んでいただきたい一冊だなと思う。

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