2025年の1月から8月上旬までに東京都内で発生した火災は3,034件。2024年1年間では4,518件ったので、少し増加傾向にあるようだ。また、ここ最近で増加傾向にあるのがモバイルバッテリーや電動キックボード、ノートPCのバッテリーから出火するケース。先日もモバイルバッテリーの発火でJR山手線が一時運休になるという事件があったが、今までのように「ガスレンジやたばこの火に気をつけよう」ということでは防火対策としては若干不足しているということだろう。
東京消防庁が火災で1年間に出動する回数は約4,500件。1日あたり12件前後の計算になるので、2時間に一件の火災が発生している計算だ。東京消防庁は世界的にも規模の大きい消防組織だが、日頃から高層ビルでの脱出訓練や実際に火を使った消火訓練、化学防護服での特殊対応訓練や地震・津波など大規模災害時のシミュレーションを行うなど、火災対応のプロとしての訓練が日夜行われている。
時代を遡って、江戸時代の消火組織と言えば「火消し」。火消し鳶(とび)と呼ばれる面々が防火・消火活動に当たっていたが、「家事と喧嘩は江戸の花」と呼ばれるほど多くの火災が発生していたので、火消しに対する期待はかなり大きかったのだろうと思われる。
今村翔吾さんが書かれた「火喰鳥――羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫)」は、そんな江戸時代の火消しが主人公となっている物語だ。
かつて、江戸随一と呼ばれた武家火消がいた。その名は、松永源吾。別名、「火喰鳥」。しかし、五年前の火事が原因で、今は妻の深雪と貧乏浪人暮らし。そんな彼の元に出羽新庄藩から突然仕官の誘いが。壊滅した藩の火消組織を再建してほしいという。「ぼろ鳶」と揶揄される火消たちを率い、源吾は昔の輝きを取り戻すことができるのか。
炎を喰いつくすように消火することから主人公の源吾につけられた別名だが、火災が多かった江戸時代だからこそ炎をものともせず立ち向かっていく火消したちは無くてはならない存在だったことが窺える。現在13巻まで出されているが、どの巻も一冊ごとに一話完結という構成になっていて、単に火災に関することが書かれているだけではなく、火災を題材としたミステリーになっている。時代小説でありミステリー小説でもあるこの物語を読んで、火災に立ち向かっていく勇敢な火消しの姿に元気をもらえる心の栄養剤のような物語でもあった。
