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「任侠書房」をはじめとした任侠シリーズが痛快!(今野 敏)

#おうち時間

嫌なことが起きると次々と嫌なことが起きて、まったくもってスッキリしないということがある。負の連鎖というか、天中殺というか、バイオリズムが底にきているというか、とにかく気分が晴れないという日がある。そんな時には何もする気にならないのだが、何もしなければしないで嫌なことを思い出して意味もなくイライラしたりクヨクヨしたりということにもなる。 

解決法としては、好きな音楽を聴いたり、没頭できる映画を観たりするのも一つの方法だ。新型コロナ対策で、平日は在宅勤務をしていて通勤時間分が自由時間となり、週末は外出自粛ために自分や家族との時間が増えているので気分転換を図る時間も確保しやすいだろう。

個人的には好きな音楽を流しながら、とっておきの本を読み返すというのが気分転換にはとても良い。そんな時に読む本は趣味の本であったり雑誌であったりと、パラパラと流し読みできる物も気軽で良い。活字が大好きなのでいきなり本を読むというよりは、雑誌などを拾い読みして活字を目に焼き付けて、気分が乗ってきたらそれから長編小説などを読むということも多い。

そうやって考えてみると、長編小説を読む前にパラパラと雑誌などに目を通すのは、ジョギングを始める前の準備運動のようなものだろうか。体を温めてから走り出すのと同様に、ページをめくって活字を目で追うことで体や脳が「さあ、読書をするぞ」という体勢になるのかもしれない。

任侠書房 (中公文庫)

最近「これは面白い!」という一冊に出会い、立て続けに3冊のシリーズ物の小説を読んだ。そのきっかけになったシリーズ第一作目が 、今野敏さんの「任侠書房 (中公文庫)」だ。手前味噌な話しながら、私と同じく本好きの息子が「これ面白いよ」とプレゼントしてくれた一冊だ。

日村誠司は阿岐本組というヤクザのナンバー2である代貸だ。ヤクザと言っても地元の役に立つ任侠堂をわきまえたヤクザであり、その辺の暴力団とは一線を画している。

阿岐本組の組長は、一見すると僧侶を思わせるような温和な風貌の親分だ。若い頃から周囲の人望を集め、全国各地のヤクザと杯を交わしていることでも有名だ。その阿岐本組の組長が、ひょんなことから倒産寸前となっている梅之木書房の経営を行うことになった。意気揚々と出社する組長とともに出版社の取締役となった代貸の日村は、一癖も二癖もある編集長や編集者と対応しながら、組の若い衆をも巻き込んで経営の立て直しに奔走する。そんな日村たちに、マル暴の刑事たちや梅之木出版の地元ヤクザが目をつけてくるのだが。

ヤクザが主人公の物語なので刑事物のような展開なのかと思いながら読み始めたが、読み始めた途端に物語のテンポの良さにぐいぐいと引きつけられ、いつしか企業再建物語を読んでいる感覚になっていた。

代貸の日村は自由奔放な組長の指示に従い奔走するのだが、企業を立て直すためのスーパー中間管理職の雰囲気を醸し出していて面白い。また、組の若い衆もそれぞれ特技を持っていて、それを出版社という表舞台で活用していく様も痛快だ。そして最後に大きな困難が梅之木出版と阿岐本組の前に立ち塞がるのだが、それを完璧なまでに克服する様子はまさに水戸黄門的な痛快さを感じさせてくれる。

 そう、この物語は「こうなると良いな」と思った通りに話が進み、「こうなると嫌だな」と思った通りの困難に巡り合うという、読んでいてストレスのたまらない物語だし、読んでいてスカッとする物語なのだ。

 先行き不透明な今だからこそ、こういった『愉快痛快』な物語をじっくりと読んで過ごす休日というのも良いものだと思う。

任侠書房 (中公文庫)

任侠書房 (中公文庫)

  • 作者:今野 敏
  • 発売日: 2015/09/01
  • メディア: 文庫