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「ろう者の音楽」を視覚的に表現した映画『LISTEN(リッスン)』

 映画館に行って映画を観るのは、年に3回から4回ぐらいだろうか。自宅でDVDやBlu-rayで映画を観ることの方が多いが、映画館でじっくりと鑑賞するのはやはりなんとも言えず良いものだ。一方で、映画館で観たいと思う映画はなかなか見つからないものだが、5月の連休が終わると「これは観てみたい」と思わされる映画が封切りになる。

 その映画は音楽も音声も一切無いという、今までにないアート・ドキュメンタリー映画だ。

「ろう者の音楽」を表現した映画

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http://www.uplink.co.jp/listen/

 5月14日に封切られるのが、ろう者の音楽を視覚的に表現した『LISTEN リッスン』という映画だ。クラウドファンディングで資金を募集していた映画だが、全編にわたって無音という今までにない内容だ。

 映画の中で語られる言語は全て「手話」。音の聞こえない世界にいるろう者達が、自ら音楽を奏でるアート・ドキュメンタリー映画となっている。 

 

 ろう者と音楽は一見すると縁がないように感じるが、予告編を見ているだけでも視覚的に音楽を捉えていることが伺える。一般的な概念や考え方が正しいとは限らないということも含めて、いろいろなことを考えさせてくれる映画だ。

 それ以前に、出演している方々の表情や動きが非常に素晴らしい。全身を使って音楽を表現しているだけではなく、指の先から髪の毛の先まで、体の隅々にまで感情が行き渡っていることが伝わって来る。

 出演者は国内外で活躍している舞踏家から、演技経験も映画への出演経験も一切ない一般のろう者まで、いろいろな人々が登場して音楽を表現している。若い人は全身を弾けるように使って表現し、年齢を重ねた方は指先までをも含めて繊細な動きで表現をする。

 この作品の監督は、牧原依里さん(写真左)と雫境[DAKEI]さん(写真右)の二人。ろうの二人が互いの感性を響合わせて生まれたこの映画は、ろう者はもちろんのこと健聴者の心にも響く内容だという予感を感じる。 

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共同監督:牧原依里

1986年生まれ。聾の両親を持つ。小学2年まで聾学校に通い、小学3年から普通学校に通う。大正大学で臨床心理学を専攻。会社に勤めながら映画制作を行っている。 2013年ニューシネマワークショップ受講。2014年Movie-High14『今、僕は死ぬことにした』(短編映画)上映。

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共同監督・出演:雫境(DAKEI)

 2000年東京藝術大学大学院博士課程修了、美術博士号取得。大学院在籍中、舞踏家・鶴山欣也の誘いを受け、舞踏を始める。国内のみならずアメリカ、イギリス、スペイン、メキシコなど世界中を舞台に活動。また、アニエスベー初監督映画『わたしの名前は...』などの映像作品に出演、幅広く活動を行っている。

https://readyfor.jp/projects/listen

 監督の牧原さんが数年前に行った講演をたまたま聴いたことがあるが、物事の本質をズバリと突く内容で、とても頭の良い方だなと思った覚えがある。もう一人の監督である雫境さんは、昨年夏に知人に誘われて観た舞台「残夏-1945-」 に出演されていたが、存在感のある心に響く演技だったことを思い出す。

 たまたま直接お見かけしたことのあるお二人が、共同で監督をされていることに勝手にご縁を感じているが、それも含めて非常に興味深い映画だなと率直にそう思う。

www.uplink.co.jp

手話は美しい言語だと思う

 手話を学び始めて丸3年が過ぎたが、ようやく片言の手話を使えるようになったかなという程度だ。それでも、今まで全く読み取ることのできなかったろう者の手話を自然と読み取れる瞬間があって、そんな時には理屈抜きで嬉しい。人はコミュニティーを必要とする生き物だということを、自分自身のそういった体験で感じることがある。

 そもそも私が手話を学びたいなと思ったきっかけのひとつが、手話は「手や腕だけではなく表情を含めた全身の動きが美しい」と感じたことだ。たまたまご縁があり、ここ数年の間に多くのろう者と知り合う機会が多かったことも幸運だった。

 今でも手話は動きの美しい言語だと思うし、綺麗な手話を使う方と出会うと思わず見とれてしまう。こんなおじさんに見とれられるというのは迷惑な話かもしれないが、理屈抜きでそう感じるのだから仕方がない。だからこそ、手話の勉強をしていても全く苦ではないし、講習会が毎週楽しみだと思えるのだ。

 今回ご紹介した映画は全編手話が流れるうえに、言葉ではなく「音楽」が奏でられるので、手話の持つ美しさがさらに際立つのではないかと期待している。公開日が待ち遠しい。