「物は大切にしなさい」。そう言われて育った人は多いだろう。昭和40年代に少年期を過ごした私は、現在のエコロジーという観点ではなく、戦後の物不足を経験した両親から当たり前のようにそう言われて育った。生活用品だけではなく、文房具類も同様だった。
鉛筆も消しゴムもギリギリまで使う
昔の話をすると若い方に嫌がられそうだが、鉛筆は短くなってもすぐには捨てず、鉛筆補助軸(鉛筆ホルダー)という道具に取り付けて使っていた。金属製の補助軸は何となくメカっぽくて、使っていて楽しかったことを思い出す。今でも鉛筆ホルダーは人気のようだが、物を大切にする気持ちとちょっとしたおしゃれ心とが両立できるからかもしれない。
消しゴムも同様で、小さくなるまで丁寧に使っていた。昔の消しゴムは品質的に今より劣っていたのか、強く消すと途中から折れたりしたものだ。そこで、小さくなってきたら消しゴムを覆っているケースをカッターナイフで切り、消す部分だけが外に出るよう調整した。誰が最初に考えたのか知らないが、理にかなった使い方だったなと思うし、今でもそんな使い方がされているのはご承知のとおりだ。
大きさに応じてペリペリ剥けるスリープ
https://www.tombow.com/products/mono_tough/
トンボ鉛筆が発売している「モノタフ」は、折れにくく、割れにくく、欠けにくいタフな消しゴムとして売り出されている。タフな理由のひとつは、消しゴム自体に固くしなりにくい新素材を配合していることだが、消しゴムを包んでいるスリープにも秘密がある。
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独自形状のスリープは表裏で交互にななめになっており、スリープの切れ目から消しゴムにかかる負担を分散している。
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また、スリープには握るための目印が印刷されており、ここを持つことによって消しゴムにかかる圧力が分散される。
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さらに、スリープに入ったミシン目からペリペリと剥くことによって、消しゴムの長さに応じた適正なスリープの位置を保つことができる。
スリープひとつにここまで改良を加えていることに驚くが、だからこそ日本の文房具は世界に冠たる位置を保って居られるのだろう。