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手づくりペンケース工房は障がい者が輝く作業現場だった

 福祉関連施設で作られる商品を授産品というが、ひとつひとつ丁寧にペンケースを手づくりしている作業所を訪問してきた。作業メンバーはいずれも知的障がいの皆さんだが、真剣味あふれる職人の現場だった。

■不織布で作られるペンケース

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 お伺いしたのは山梨県にある事業所。いろいろなモノづくりを行っている事業所だが、今回はペンケースを試作している現場を見学してきた。

 製品として発売されるのはもう少し先とこのことで、どのような形状が良いのか、どのような作業工程であれば効率的に作れるのかなど、試行錯誤を繰り返している段階だった。

 ペンケースの材料として使っているのは不織布。不織布の中でもマラソン競技などでゼッケンとして使われる厚手のもので、多少濡れても大丈夫という生地だ。不織布を材料として使っているのは印刷が楽だからとか。普通のコピー機でも印刷ができるので、小ロットの絵柄でもすぐに作れるところがメリットらしい。

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 模様が印刷されたA3版の不織布をペンケースの大きさに切り、それをひとつひとつミシンを使って製作していく。ふたの部分と本体の部分を別々に作り、それを組み合わせて完成形となる。

 ふたの部分と本体の部分を別々に作るという作業手順には理由があって、その方が直線縫いだけで作業が行えるからだ。知的障がいのメンバーが作業を行うためできるだけ複雑な作業を省くとともに、ミシンの操作や手順の工数を少なくするための工夫だ。

 作業工数が少ないから簡単な作業ですむというわけではなく、同じ位置をまっすぐ縫っていく作業は案外難しい。これを一針一針丁寧に縫っていくには集中力が必要で、さらに一日中集中しながら縫うためには根気も必要だ。そういった点では、知的障がいのメンバーは健常者よりも能力を発揮するとのことだった。

 完成した試作品は和の雰囲気を醸し出すことをイメージしていて、日本ならではの箸置きを意識したデザインとなっていた。これから様々な工夫が凝らされるとのことだったが、商品として世の中に出てくるのが楽しみだと思える仕上がり具合だった。

■仕事ぶりが職人だった 

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 作業を行っているメンバーは常に無言で、常に集中して作業を行っていた。指導されている方にお話を聞くと、一度覚えた工程はしっかりとこなし、休むことなく丁寧に作業を続けられる方々ばかりだとか。

 作業場所はとても清潔な環境に保たれていたが、ミシンやハサミなどの道具は一日の終わりに丁寧に磨かれ、作業台も床も糸くずひとつ残っていないように清掃をするらしい。

 整理整頓を行うことやしっかりと清掃することは彼らの日常的な決まりごとになっていて、そこまで含めて自分の仕事だという認識を強く持っているとのことだった。仕事ぶりといい道具や作業室に対する向き合い方といい、まさに職人たちの作業現場なんだなと感じた。

 作業を行っているときの表情は常に真剣で、それでいて休憩時間は弾けるような笑顔になる。オンとオフをしっかりと切り替えられる彼らの仕事に対する姿勢を、私も見習わなければいけないなと強く感じた。

■常に何かのプロでありたい

 思い起こしてみれば、私も社会人になったころには非常に真剣に仕事に取り組んでいたと思う。良くあることかもしれないが、仕事に慣れるにしたがって仕事に対する取り組み姿勢が緩くなったような気がする。

 もちろん仕事に「慣れ」は必要で、慣れるからこそ効率的に作業を進めることができる。しかし、慣れることと真剣さを失うこととは別で、仕事に対する姿勢は常に真摯であるべきだと思う。

 真摯に取り組んでいるからこそ自分の仕事に想いが強くなるし、想いが強くなるからこそプロとしての高い意識が醸成されるのだと思う。最近では様々な分野で職人技が見直されてきているが、仕事に対する真摯な取り組み姿勢と強い想いがあってこそ、プロ意識が育ち職人技が磨かれる。

 モノづくりだけが職人技を発揮できる場ではなく、例えば数値分析の職人もいればタイピング作業の職人がいてもおかしくない。要は「自分はこの仕事に関して、お金をもらって行っているプロなんだ」という意識を常に持てるかどうかではないかと思う。

 プロ意識を持って職人化を目指すことは、大げさに言えば人を輝かせることにもつながる。私も「これだけは負けない」というものを、何歳になっても追い続けたい。