「心が折れる」という言い方がある。感覚的にとても言い得て妙な言葉だと思う。
心がポキッと折れたことは大なり小なり誰でもあるだろうし、若い頃の失恋時にはポキンポキンと心が折れたことがある方も多いだろう。私なんかは、折れるどころか心が砕け散ったこともある。
この言葉は最近の流行言葉だと思っていたが、日経ビジネスによると「心が折れる」という言葉は少なくても江戸時代からあったらしい。
しかし、元々の意味は「気持ちを相手側に曲げる」ということらしく、現在の使い方とはかなり意味が違ったようだ。例えば全く弟子を取らなかった職人が、毎日毎日朝早くから弟子入りを懇願しにやってくる若者を見て「お前には負けたよ。弟子にしてやる」というようなときに使う言葉らしい。
最近では「心がくじける」とか「めげる」という意味で「心が折れる」という言葉が使われている。そんな時には、必ずと言って良いほど「人間関係」が根本にあるだろうと思う。親子関係しかり、兄弟関係しかり、恋人関係しかりである。
働いている人であれば、職場での人間関係というのも非常に重い。周囲が良い人ばかりだというのは珍しいだろうし、職場によっては「とにかく相手を攻撃する人」というのも残念ながら存在する。また、学校という世界も閉鎖的な面があり、子どもが常にストレスを感じながら通うということもあるだろう。
そんな時にはどうすれば良いのか。ひとつの考え方をしめしてくれる一冊を読むことができた。
私が読んだのは岩井俊憲さんが書かれた「人間関係が楽になるアドラーの教え」という一冊。心理学者であるアドラーの考えを、分かりやすく丁寧に説明した一冊だ。
◎相手の機嫌が悪いのは、自分のせいではない
◎「苦手イメージ」は上書きできる
◎「褒め」では、真の人間関係は築けない
◎「ありがとう」はメールで贈ろう
◎劣等感は「かけがえのない友」
◎ギクシャクしたら、「ななめ横」から話す
◎上手に自分の意見を主張する方法
◎「いい人」にならないための習慣づけ
◎仲が良いように振る舞うだけでもいい
(Amazonの内容紹介から抜粋)
アルフレッド・アドラーはオーストリア出身の精神科医であり、心理学者、社会理論家としても知られている。ジークムント・フロイト、カール・グスタフ・ユングと並んで、現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立した1人とされている。
アドラーが確立させたアドラー心理学は個人心理学と呼ばれており、一人ひとりはかけがえのない存在だという前提で語られている。そのうえで、人の悩みのすべては人間関係だと位置づけ、それに対する心の在り方を説いている。
本書では、「人間関係を楽にする方法」を具体的な行動を示しながら解説している。例えば職場で機嫌の悪い人に対してはその人の問題だと割り切ったり、朝起きた時に「今日も爽快だ」といいながら起きることで心を切り替えたりする方法などが書かれている。
また、自分の周囲の人に対する接し方も書かれていて、自分だけではなく周囲の人に対して人間関係を楽しにしてあげる方法も書かれている。
ベストセラーとなっている「嫌われる勇気」も読んだが、こちらは哲学者と若者との会話という形でアドラーの教えを説いて行く方式がとられており、今回ご紹介している一冊はケースごとの対応方法や行動が章ごとに整理されている。どちらが読みやすいかは個々人によって異なるだろうが、どちらも人間関係で心が折れそうな時に心に効くサプリのような一冊だと思う。