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ふと、青春の頃を思い出す一冊「でーれーガールズ」(原田マハ)

 故郷を離れて30年以上が経った。考えてみると、いつの間にか東京で過ごした年数の方が、故郷で過ごした年数を軽く上回っている。良く聞く話だが、自分がそうだと思うとなかなか感慨深い。

 ところで、皆さんは故郷という言葉で何を思い浮かべるだろうか。私が一番最初に思い浮かべるのは「方言」だ。景色や食べ物よりも断然「方言」が真っ先に頭に浮かぶ。

 私が生まれ育った町は九州鹿児島の南東部にあるが、鹿児島弁というのはとにかく独特で分かりにくい。分かりにくいことがまた誇りになっていたりするのだが、鹿児島弁を一気にまくしたてられると大概の人は固まってしまう。

 昔、県外からから引っ越してきた人が近所に挨拶に行き「東京から引っ越してきました」と言ったところ、おもむろに「どけ!」と言われて面食らったという話があった。言われた方は「いきなり退けとは何事だ」と憤慨したものの、鹿児島弁で「どけ」は「どこに?」という意味だと分かって苦笑いしたというオチだ。

 実話か否かはわからないが、鹿児島弁の独特さを表している分かりやすい例だと思う。独特だからこそ故郷の言葉を聞くとフワッとした懐かしさが沸き上がるし、一気に10代の頃の自分に戻ってしまったりもする。

 故郷を離れて暮らしている方は、大なり小なりこういった感覚というのをお持ちではないだろうか。

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

 原田マハさんの「でーれーガールズ」も、物語の中で方言がピリッと効いている。物語の舞台は岡山だが、タイトルの”でーれー”という岡山弁も、東京から引っ越してきて戸惑う主人公の様子を表すキーワードとなっている。

 原田マハさんの物語に登場するのは「しっかりと前を向いている女性」というタイプが多いが、今回の主人公も”現在は”そういうタイプの女性だ。しかし、時代を遡ること30年とちょっと。1980年代の彼女は、いまひとつパッとしない女子高生だった。

 その彼女が、ちょっとクールで美しくて不良っぽいクラスメイトの武美と触れ合うことで、青春という限られた時間を濃厚なものにしていく。誰にでもあった青春という時期を、誰にとっても輝かしくもちょっと気恥ずかしい記憶とともに思い出させてくれる物語だ。

 原田マハさんと私とは同年代。物語は現在の出来事と過去の思い出とがリンクしながら進んで行くが、そのどちらにも見逃せない”出来事”が次々と起こり、読んでいてグイグイと引き込まれてしまう。岡山には仕事のため日帰りでしか行ったことが無いが、この物語を読んでゆっくりとじっくりと岡山の街を歩きたくなってしまった。

 秋の夜長に一気読みしてしまったこの一冊は、きっともう一度読み返すに違いない一冊だと思う。

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

でーれーガールズ (祥伝社文庫)

 

 内容(「BOOK」データベースより)

一九八〇年、岡山。佐々岡鮎子は東京から引っ越してきたばかり。無理に「でーれー(すごい)」と方言を連発して同じクラスの武美に馬鹿にされていた。ところが、恋人との恋愛を自ら描いた漫画を偶然、武美に読まれたことから、二人は急速に仲良しに。漫画に夢中になる武美に鮎子はどうしても言えないことがあって…。大切な友だちに会いたくなる、感涙の青春小説。