「古民家」とは一般的に戦前に建てられた家屋を指し、特に対象以前のものを指すことが多いようだ。個人的なイメージとしては茅ぶき屋根の建物を思い浮かべるが、町中の古い家屋も対象となるのだろう。
東京近郊でも古民家を改装したカフェや雑貨店を見かけることがあるが、それらは周囲とは異なる雰囲気を醸し出していることがある。さらに、「古民家風」となるとまるで違うものになってしまうが、新潟で訪問した雑貨店は町並みにマッチした「古い家屋」と呼んだ方がピッタリのお店だった。
古い家屋を使った素敵なお店
JR新潟駅から車で10分ほど海側に行き、通りから数十メートルほど入ったところにあるのが「スイモン」という雑貨店。気をつけて見ていないと通り過ぎてしまうぐらい、本当に普通の民家のような佇まいだ。
店主の中島さんとは以前からの知り合いだが、以前から福祉と社会とをつなぐ活動を行っていた方だ。当初は、福祉の現場で作られるモノに対する商品企画などを中心に手掛けられていたが、現在は実際に販売する側としての役割を担っている。
店内は木の温もりが感じられる内装だが、昔の家屋をそのまま使用しているため、のんびりとした生活感のようなものが随所に漂っている。そのためなのか、お店の片隅にある椅子に座ったり、奥にあるラグマットに座ったりしていると、腰を上げたくなくなるような居心地の良さがある。
子ども達が飽きないようにと置かれている黒板も、室内の雰囲気に馴染んでいて違和感がない。
以前から訪問したいと思っていたお店なので、店主が接客中にこっそりと似顔絵を描いてみた。チョークのカリカリという感触も新鮮だ。
来店された方に「もっと目立つような入り口にしないとお客さんが来ないわよ」と言われていたが、店主の中島さんはニコニコと笑っているばかり。そんな会話を聞くこともなしに聞いていたが、このお店は人を静かに惹き付ける何かがあるので、このままでもきっと繁盛していくのだろうなと思った。
もう一度訪れたいお店だなと思うし、新潟に行く用事がある人には必ず立ち寄ることを勧めたいお店だ。
■スイモン
住所 新潟市中央区東堀通三番町471
営業 水・木・金 11:00-16:00
土 11:00-18:00
※仕入れ等のため臨時休業あり
(情報はブログに掲載http://blog.livedoor.jp/risa0331suimon/)
http://suimonn.jp/suimon/home.html
店主のこだわりが垣間見る品揃え
このお店に置かれているのは、全国の授産所(じゅさんじょ)等で作られた商品がほとんどだ。
授産所とは、身体障害者や知的障害者、家庭の事情で就業や技能取得が困難な人に対して、就労の場や技能取得を手助けする福祉施設のこと。全国各地でたくさんの施設が運営されている。
授産所は雇用契約ではなく利用契約の形態をとる事業所が多いため、授産所全体の売り上げを利用者で分配することになる。そのため、ほとんどの授産所では1ヶ月の工賃が一人一万円前後というところが多く、工賃アップが全国的な課題となっている。
「スイモン」ではそういった全国の授産所で作られている商品のうち、福祉の枠を超えた品質の高い商品を店主自らが選び、社会との接点として販売している。授産所の商品を販売する場合の課題の一つに”販売力”があるが、それを一個人で担っている形だ。
決して大量販売ができるわけではないが、できることからひとつずつ取り組む。そういった取り組みが人づてに伝わることによって、徐々に大きなムーブメントとなって社会に広がっていく。そんな発信力が備わると、「スイモン」の役割がさらに大きくなっていくのだろうと思う。
素敵な商品あれこれ
「スイモン」の店内は不思議な空気に包まれている。私の拙い写真技術ではそのひとかけらもご紹介することができないが、お時間がある時にご覧いただけると嬉しい。