今週のお題「最近おもしろかった本」
皆さんは「福祉」という言葉を見聞きすると、どんなイメージを持たれるだろうか。プラスイメージだろうかマイナスイメージだろうか。本来は「(主に公共機関から)社会の成員が等しく受けることのできる安定した生活環境」という意味であり、誰しも生きていれば福祉の恩恵に預かっている。
しかし、障がい者福祉となるとどうしても、残念ながらマイナスイメージが先行してしまう。私の思い過ごしだろうか。そんなときにこの雑誌を見ると元気が出る。何といっても「社会をたのしくする障害者メディア」と銘打たれているのが良い。
社会をたのしくする障害者メディア
「コトノネ」は2012年1月に創刊された障害者関連の季刊誌で、徐々に各地の書店で見かけるようになってきた。謳い文句のとおり読むと元気が出る情報がたくさん詰まった雑誌だ。
元々は、東日本大震災で被害を受けた障がい者及び支援施設の復興支援を目的として創刊され、被災地にある就労支援施設などの状況も随時掲載されている。最近ではA型事業所の実情や各地での雇用に関することなど、様々な情報が網羅されている。
今回の特集は沖縄。漁業と福祉作業所という、一見全く関係のなさそうなことが絶妙にコラボしていて、冒頭からかなり興味深く読み進めていける。そのほかに沖縄の名産品のことが書かれていたり、お寿司屋さんの情報が掲載されていたりとまるで沖縄のガイドブックのようだ。
キジムナーが住む森の佐喜眞美術館
特集 沖縄おーきなわ 観光地めぐりでは味わえないコトノネ流ガイド
ぶっちゃけインタビュー 現代美術家 照屋勇賢
クリスマス島で見つけた「降りてゆく生き方」
沖縄の食文化を取り戻す、健康農園づくり 合同会社かがやき
障害者の就労事例 JAおきなわの星
写真も素敵で枚数も多く、これが障害者メディアなのかと思わず表紙を見直してしまう人もいるだろう。もしかしたら、障がい者メディアだと気づかずに「面白そうだから」と買っていく人がいるかもしれない。それだけ「福祉」とか「障害者」ということを感じさせない紙面づくりは、障がいを一つの個性としてとらえている編集姿勢があればこそだと思う。
障がい者福祉に興味がある人も無い人も、沖縄に興味がある人も無い人も、誰もが読んで楽しめる一冊だと思う。「楽しみながら」読んでいただきたい一冊でもある。
障害者メディアらしくない障害者メディア
私がこの雑誌に出会ったのは、新聞記事で紹介されたのがきっかけだった。今まで障がい者関連雑誌というと自治体が作る冊子のようなイメージがあったが、表紙全面に笑顔の写真が配置されていてハッとしたのを覚えている。
さっそく取り寄せて購読してみたところ、登場する人々の笑顔がとにかく良いなと感じた。この雑誌は「人」を中心にした雑誌なんだなということが分かっただけではなく、「人」「笑顔」「ひたむきさ」「建設的」といった要素が満載の雑誌だった。
こういう雑誌が普通に書店に並んでいて、普通にみんなが買って読む。そんな世の中になれば、きっと今よりもさらにみんなの笑顔がこぼれる明るい社会になるのではないか。そんなことまで思ってしまう。
進化し続ける雑誌
この雑誌の面白いところ(素晴らしいところ)は、徐々にパワーアップしていくところ。発行数が増えていくとかページ数が増えていくというようなことではなく、号を重ねる毎に内容が充実しているし成長しているように感じる。
(失礼な言い方ながら)決して儲からないであろうこういった雑誌が、これだけ充実した記事と写真で作られていることが驚きだし、編集部、編集者の想いというものが詰まった雑誌だと思う。