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商品開発に情熱を傾ける職人二人の物語「おじいちゃんのノート 下町の職人魂がオンリーワンを生んだ」(中村輝雄)

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商品開発には「想い」と「情熱」と「物語」が大切だと日頃から感じていた。今までにないものを生み出すという作業は、そのいずれかが欠けても成し遂げられない。そんなことを、改めて考えさせられる一冊を手にした。

下町の職人二人が生んだ新商品開発物語

先日、東京の下町で開発された方眼ノート A4 5mm罫をご紹介させていただいたが、その開発過程などを綴った本が出版された。中村印刷所社長等の奮闘ぶりをまとめた「おじいちゃんのノート-下町の職人魂がオンリーワンを生んだ-」という一冊だ。

 中村社長の少年時代からのことを綴ったこの本は、戦後の印刷業界の動向や印刷技術の変遷、新商品を開発するきっかけから完成後のことまでが一気に書かれている。

 「ノートっていうのは真ん中が膨らんで、押えないといけないから書きにくい」 ある日、偶然耳にしたそんな一言から、 下町の小さながけっぷち印刷所で、 73歳と80歳、おじいちゃん二人の挑戦が始まりました。
「水平開きノート」に欠かせない接着剤の開発に悩んだこと。 なんどもなんども失敗を重ね、落ち込んだこと。 ノートがようやく完成してからも、 まったく売れずに8000冊の在庫をかかえ、途方に暮れたこと。 2016年元日、孫が投稿したTwitterがきっかけで、ノートの注文が殺到し始めたこと―
「製本の革命を起こそうよ! 」 と立ち上がり、誰にも真似できない「水平開きノート」を作り出すまで。 職人の魂を描いたノンフィクションです。
(Amazonの「内容紹介」から引用)

大企業でもなく若者でもない。下町のおじいちゃん職人二人が商品開発だけではなく販路開拓まで行った記録は、読んでいて元気と勇気を与えてくれる。

何よりも、中村社長の考え方の根底にある「新商品開発によって脱下請けを画策する」というチャレンジャブルな姿勢が素晴らしい。

また、印刷所を営むうえで人とのご縁を大切にしていたからこそ、最後は人のご縁にも恵まれてここまで成功したことが良くわかる。そういう意味でも、読んで元気が出る内容だ。

お二人が開発した製本方法は、ジャポニカ学習帳などを製造販売するショウワノートがコラボを申し入れたことによって、単なる「良い話」以上の展開を見せている。これもまた素晴らしいことだ。

「世の中捨てたもんじゃないな」と思える一冊だ。 

もれなく方眼ノートがついてくる

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書籍には付録として方眼ノートの四六版がセットされている。表紙が二重になっていて、ペリッと剥がすと書籍とノート添付部分とに分かれるという面白い作りだ。

 付録になっているのは、もちろん手作りで特製の方眼ノート。四六版の製造販売は行われていないので、貴重な一冊だしこれでまたノートの売り上げが上がるという二重の仕掛けが行われている。

このノートを使ってみてこのノートの良さを知り、改めて売り上げが伸びれば言うことないなと思う。

書籍というよりはコンビニ本

「おじいちゃんのノート」の出版元はセブン&アイ出版。名前のとおりセブン&アイホールディングス系列の出版会社だ。同社は雑誌や書籍を出版しているが、セブンイレブンの店頭に並んでいるいわゆるコンビニ本の出版も手がけている。

今回ご紹介した一冊も写真を見ると通常の文庫本のようなイメージだが、実物はコンビニ本のテイストになっていて大きさもページ数も手ごろなサイズだ。

通常の文庫本をイメージしていると「あれっ?」という感じになるが、中身は中村社長の一人語りという形式を取っていて読みやすくてわかりやすい。私にとってはコンビニ本のイメージを変えてくれる一冊だった。