東京の京王線千歳烏山駅近くに、美味しいドーナツのお店がある。小さな店舗ながら土日ともなると買い物客が絶えないぐらいの人気ぶりだが、味や立地条件など小さい店舗ならではの戦略がありそうだ。
■小さな店舗の美味しいドーナツ
京王線千歳烏山駅の北口から徒歩3分。大通りに出た角にあるのが、ドーナツ専門店の「一久庵」というお店。買い物客が待つスペースはほんのわずかで、天気が良い日は写真のように自転車に乗ったままで買って行く人もいるぐらいだ。
中に入ると3人ほど座れるイートインコーナーがあって、この日はソフトクリームを食べている親子連れがいた。
あってもなくても構わないようなイートインコーナーだが、 小さなカウンターに椅子が並べてあるだけでお店の雰囲気が入りやすくなるような気がする。
素材にこだわったドーナツは一個150円。高いか安いか議論が分かれるところだが、ヘルシー志向の人や昔ながらの素朴な味が好きな人には手頃な値段かもしれない。
ドーナツの種類が一種類というのも選ぶ楽しみが無くて寂しいような気がするが、逆に一種類だからこそ飽きないというのもあるかもしれない。
モチモチとした食感と甘みの少ない味は、トッピングがかかった甘いドーナツを食べなれていると少々物足りない感じがする。しかし、噛めば噛むほど味が出てくるので、素朴な味わいが案外癖になってしまうかもしれない。
ここ「一久庵」はつい最近までは「いっ久どーなつ」の支店だったようだが、名前を変えて暖簾分けのような形になったようだ。価格も以前より若干下げたようだが、一個150円というのは高そうでそうでもなくて、絶妙な価格設定だと思う。
■小さな店舗の戦略
「一久庵」のようにごくごく小さな店舗を”一坪店舗”と呼ぶことがあるが、小さな店舗にはそれなりの利点がある。
まずは家賃などの固定費が少なくて済むこと。売上げがあってもなくても払う必要がある家賃は、安いにこしたことはない。また、店舗を小さい分内装にもお金がかからず、初期投資も少なくて済むという利点がある。
逆に店舗が小さいため商品を並べる場所がなく、来客者がいろいろ選ぶということが出来にくい。厨房などの専用設備も広さが限られてしまうので、作れる物も限られてしまう。
しかし、その小ささを強みとして考えれば、小さな店舗ならではの戦略が見えてくるような気がする。
商品を並べられないので一点物として品質に力を入れ、他店との差別化を図るのもそのひとつ。材料にこだわったりオーダーメイドの品物をその場で作ったりと、小回りの効くところを売りにするのもありだと思う。
以前、起業に関する話を聞いた時に、失敗しない開業方法の中に①固定費を極力少なくする、②現金取引をする、③注文を受けてから作る(在庫を持たない)、というものがあった。
小さなドーナツ屋さんはそれを実践している例として面白いなと思うし、小さな店舗ならではの戦略があるんだなと感じた。