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ミステリーの衣をまとったラブストーリー「たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に」(佐藤青南、 栗俣力也(原案))

「嘘つきは泥棒の始まり」とは昔から言われている格言だ。「平気で嘘を言うようになれば、良心がなくなって盗みも平気ではたらく人になる」という戒めであり、「だから嘘をついてはいけないのだ」となる。

一方で「嘘も方便」という言葉があり、こちらは 「目的を遂げるためには時には嘘をつくことも必要になる」という意味だ。ただし、この言葉には「悪事のための嘘はダメだ」という意味も込められているので勘違いしてはいけないようだ。

そのほか、「可愛い嘘」とか「嘘八百」のように嘘にまつわる言葉がたくさんあるのは、人が嘘をつかずに生きていくのは難しいからだろう。他愛のない嘘やちょっとした誇張は許されるだろうし、場合によっては助けられることもある。大切なのは、その嘘によって傷ついたり利益を損なったりする人が出るかどうかということではないだろうか。

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)

佐藤青南さんが書かれた「たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)」は、ミステリーの衣をまとったラブストーリーだ。サイコパスな人物に恐怖を覚えながらも、ピュアな恋愛感情に胸を打たれる。そんな物語だ。

主人公の伊東公洋は、司法書士の資格取得を目刺しながら働く真面目で優しい青年。勤務する事務所はワンマン所長が怒鳴り散らすブラックな会社だが、理不尽なことにもめげずに仕事に勉強に真摯に取り組んでいる。

ある日、友人の森尾に連れられて行った店で、大学生の小田奈々と出会う。お店のマスターに紹介されたのが縁で公洋と奈々は連絡を取り合うようになるが、一緒に食事に行ったり映画を観に行ったりしているうちに、公洋は奈々の明るさに惹かれていく。

一方、職場では同僚の峯岸祐子が公洋に好意を示すようになるが、その態度や行動が徐々にエスカレートしていく。自分の願望を達成するためには非道な「嘘」をつくとこもいとわない祐子は、ついに公洋を窮地に追い込む行動に出てしまう。

二人の女性を巡って窮地に追い込まれていく主人公の心情が、スピード感のある展開と相まって読み手にどっと押し寄せてくる。ラストに向けてどんでん返しの繰り返しで、思いもよらない結末に息を飲んでしまう。しかし、そこには言い様のないピュアな愛情が浮かんできて、ミステリーの衣を着たラブストーリーなのだということを思い知らされる。

物語の原案を考えた栗俣力也さんは書店員。人目をひく売り場づくりで数多くのヒット作を作り、「仕掛け番長」の異名を持つ名物書店員。この小説も栗俣力也さんが物語のアイデアを練り、佐藤青南さんが内容を膨らませて小説にした作品だ。ぐいぐいと惹きつけられるストーリー展開は、読者に一番近い場所にいる書店員のアイデアだからこそだろう。そういう意味でも一読する価値のある一冊だと思う。

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)