先日出掛けた先のビルで、エレベーターホールに淡い色で傘のマークが点いていた。何だろうと思いビルに勤務している知人に訪ねたところ、「外は雨が降っているんだよというマークですよ」と教えてくれた。ビルの中にいると外の天気が分かりにくいので、「外は雨ですよ。傘は持ちましたか?」と教えてくれるマークなのだそうだ。降雨計に連動して自動的に表示されるのだと思うが、どこかアナログな感じがして思わずホッとするような感覚を覚えた。
分かりやすく、さりげなく、どこかホッとするマークと言えば、オリンピックの開会式で評判になったピクトグラムだろう。競技を表すピクトグラムがパントマイムのように紹介されたので、オリンピック競技のピクトグラムが俄然注目を集めたが、以前から非常口のマークや駐車場の車椅子マークなどでお馴染みだろう。
もともとは、1964年の東京オリンピックの際に日本人によって作られたもので、外国語が一般的に苦手な日本人が多いことから外国人に分かりやすい表示をするという目的で考えられた記号だ。その後、シンプルで分かりやすいピクトグラムは国際的にある程度統一されるようになった。
そういえば、携帯電話やスマホで使われている絵文字や顔文字も日本発祥で世界的に使われているが、「相手に気持ちを伝える」という工夫は日本人が得意とするところなのかもしれない。そう考えると、言葉を省略する若者言葉も単に短くしているだけではなくて、音の響きも含めてクスッと笑えるものが多いなと思う。個人的には「ふろりだ」が「お風呂に入るためにチャットを離脱する」のことだと知り、クスッとどころか大笑いしたが、これも言われた相手が嫌な気持ちにならないようにという配慮があるのかなと思うのは、年寄りの考えすぎだろうか。
コロナ禍で在宅勤務やリモート学習などが増え、会社でも学校でも家庭でも何となく重い空気が漂いがちだが、こんな時こそちょっとした優しさを含んだ何かを相手に届けようと思う気持ちが大切なのかもしれない。今日は仕事から帰って手洗いうがいを終えたら、妻に「ふろりだ!」と言ってからお風呂に入ってみようかな?