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「おもかげ」(浅田次郎)

あと数年で還暦という年齢になり、10年ほど前に比べて仕事もプライペードもかなり環境が変化してきた。仕事面では後進の指導や各部署との調整、取りまとめなどの仕事が多くなってきたし、プライベートでは子どもが巣立ったことで夫婦二人の生活となり、両親もここ数年で相次いで鬼門に入った。

仕事的には、今までの経験や知識を活かせるポジションなので、サラリーマンとしては幸せなことだなと思う。一方で、プライベートな面で言うと徐々に周囲から人の気配が無くなるというか、家族や両親や親戚など、身近な人が少しずつ居なくなりつつあるという、当たり前のことにふと気付く。

それが寂しいかというとそうでもなく、ここから自分の好きなことに打ち込んだり、夫婦でゆっくりと色々な話が出来るのだなと思うと嬉しい。心身ともに落ち着いてきたということだろうし、それがまた幸せなことだなと思う。

おもかげ (講談社文庫)

浅田次郎さんが書かれた「おもかげ (講談社文庫)」という一冊。書店の平台にずらりと置かれている最新作だが、浅田次郎さんらしい心に染みる素敵な物語だった。

エリート会社員として定年まで勤め上げた竹脇は、送別会の帰りに地下鉄で倒れ意識を失う。家族や友が次々に見舞いに訪れる中、竹脇の心は外へとさまよい出し、忘れていたさまざまな記憶が呼び起こされる。孤独な幼少期、幼くして亡くした息子、そして……。

【BOOKSデータベースより】

商社を勤めあげて退職した竹脇は、誰から見てもエリート会社員だった。しかし彼は、自身の出生に関して不明確な過去を持ち、苦悩しながらも聡明な妻に支えられて人生を送ってきた。退職祝いパーティーの帰りに乗った地下鉄内で倒れた竹脇は、集中治療室で意識を失ったまま眠りについているのだが、彼の心は外にさまよい不思議な体験をしていく。その中で出会った人々は竹脇の失われた記憶に少しずつ関連していて、その縁が少しずつ少しずつ繋がっていく。そして、最後に繋がったその記憶は、地下鉄とも結びついてとても感動的で素晴らしいものだった。

この物語は、主人公自身や友人、身内などそれぞれの視点で物語が進むのだが、それによって主人公を取り巻く環境や過去の出来事、心の内側などが少しずつ読者に伝わってくる。そして迎えるクライマックスには、思わず居住まいを正してしまうぐらい感動的だった。

人の人生の辛さや楽しさ、切なさなどがラストの場面で一気に押し寄せてきて、読後には心の中がふんわりと暖かくしてなった。さすがに浅田次郎さんの作品だし、またひとつ素晴らしい傑作に出会うことができた。読む人の年代や性別、現在までの経験などによって感じ方は変わってくるだろうが、誰が読んでもラストは心が暖かくなろうだろうと思う。

私はこの物語を読み終わって、高齢ために昨年、一昨年と相次いで亡くなった両親に無性に会いたくなった。

おもかげ (講談社文庫)

おもかげ (講談社文庫)

  • 作者:浅田 次郎
  • 発売日: 2020/11/13
  • メディア: 文庫
 

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