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「店長がバカすぎて」(早見和真)、[本屋大賞2020ノミネート作品]

お題「#おうち時間

世の中、腹の立つことが多い。仕事でもプライベートでも腹の立つことがいくつかあって、どうしてなのか考えるとたいていは対人関係に起因することが多い。人が三人集まれば知恵が出るということわざもあれば、三人集まれば揉め事が起こるという話もある。それほど、人が集まることで何かしらのエネルギーが生まれるのだろう。

人間関係で大変なのは言わずと知れた「いじめ」であったり「ハラスメント」であったりするのだが、それ自体もさることながら「いじめ」や「ハラスメント」などを行っている本人がそのこと自体を意識しているのかどうかも重要だ。

以前勤務していた職場に厳しいと評判の部長がいて、若手社員を手厳しく指導することで有名だった。その内容も、打ち合わせのスケジュール調整を誤ったというような「ちょっとしたミス」程度。一言注意すれば済むようなレベルだ。それを大勢の前でいちいち細かく指摘して責められるのだから、言われた本人はたまったもんじゃない。

ここで問題だったのは、言っている本人に全く悪気がないという点だ。本人はいたって真面目に若手社員を指導しているつもりで、いわゆる「愛の鞭」であり「上司としての勤め」だと思っている。思っているのでやり方を変えようとはさらさら思わない。結局、本人からしかるべきところに相談を入れて解決を図ったのだが、「悪気がない」ことがいちばん手に負えないことになることも少なくないなと思う。 

店長がバカすぎて

悪気なくトンチンカンなことをやってしまう店長が登場するのが、早見和真さんの書かれた 「店長がバカすぎて」という一冊。2020年本屋大賞にノミネートされた小説だ。

主人公は、吉祥寺の書店に契約社員として勤める谷原京子。本が好きで書店員になり現在は文芸担当をしているが、雇用は不安定なのにも関わらず仕事はなかなかハードで、そのうえ店長の山本猛は仕事ができないのに朝礼で無駄な話ばかりをする「バカな店長」だった。

年令的にももうすぐ三十路、仕事も失敗続き、尊敬する先輩も急遽辞職することになり、京子も書店員を辞めることを決意し店長にそのことを告げた。しかし、店長はそんな京子の話を聞くと、突然「売れっ子作家のサイン会をやる!」と言い出し準備を始めてしまう。そして、当初考えていた作家のサイン会はできなかったものの、思いがけず売れっ子作家のサイン会が開催できることになったのだが、、、

第一話は書店の店長を扱った「店長がバカすぎて」、 第二話が「小説家がバカすぎて」、そして第三話「弊社の社長がバカすぎて」、第四話「営業がバカすぎて」、第五話「神様がバカすぎて」、最終話「結局、私がバカすぎて」と続く連作短編形式ともいえる一冊だ。

本好きからみると書店員というのは素晴らしい仕事だなと思うが、この物語をはじめとして書店員を主人公にした物語を読むとかなり大変な仕事だということが分かる。この物語でもその大変さがヒシヒシと伝わってきながらも、やりがいのある仕事でもあるのだなということも伝わってくる。この辺りは、著者の書店員に対する尊敬と称賛の気持ちがそのまま表されているのではないかと思う。

本作は残念ながら本屋大賞を獲得できなかったが、非常にテンポが良くて面白くて、読み終わってから心が暖かくなる一冊だった。作者の早見和真さんは「イノセント・デイズ 」や「小説王」の作者だが、それらの作品とは全く違うコミカルな内容なのに驚かされた。

シニカルな物語もコミカルな物語も、どちらも読後に胸にしみる内容なのには驚かされたし、次回作はどうなるのだろうかという期待感も持たせていただいた。

店長がバカすぎて

店長がバカすぎて

  • 作者:早見和真
  • 発売日: 2019/07/13
  • メディア: 単行本