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働くことの原点を思い出させてくれる感動の一冊「下町ロケット2ガルディ計画」(池井戸 潤)

お題「秋の夜長に読みたい本」

 読書好きで年間かなりの量の本を読むが、時々何のために読むのかと訪ねられることがある。また、時には勉強家ですねなどと言われることもあるが、勉強のために読んでいるわけでもないので少し気恥ずかしくなることもある。

 元々は子どもの頃から本を読んで空想するのが好きで、それが大人になってもそのまま続いているだけのことだ。たまには勉強のためにビジネス書を読むこともあるが、やはり断然多いのは小説だろう。さらに「元気をもらえる小説」は大好物で、文字どおり食べるかのごとく読んでしまう。

下町の工場が夢を見させてくれる

下町ロケット2 ガウディ計画

 最近、あちこちの書店で平台を占領しているのが、池井戸潤さんの最新作「下町ロケット2 ガウディ計画」という一冊。直木賞受賞作である「下町ロケット」の続編だが、今回も中小企業の底力と信念を持つことの素晴らしさを教えてくれる一冊だった。

 大田区にある従業員200名ほどの中小企業である佃製作所。小さいながらも最先端のロケット部品を製造しているという、非常に技術力の高い会社だ。国産ロケットのバルブ製造に関しては特許も取得しており、職人気質の社員達が誇り高い仕事をしている。

 ある日、大手メーカーの日本クラインから、極めて小さなバルブの試作品製造依頼が舞い込む。今まで付き合いのなかった会社だが、商品化後の量産もほのめかされたことから製作を引き受けることになる。しかし、試作品の製作は難航を極めただけではなく、ついには一方的に他の会社に量産部分を奪われてしまう。
 気を取り直してロケットエンジンのバルブ開発に取り組む佃製作所に、今度は以前佃製作所の社員だった真野から新たな依頼が届く。
 真野が持参した指輪大の大きさをした部品は、重い心臓病患者にとっては治療のための画期的な心臓弁として効果が期待できるものだった。しかし、そのためには莫大な開発費と数年という開発期間が必要であり、さらには万が一の場合の補償問題など課題は山積していた。
 それでも事業の将来性や社会的な意義を考えた佃は、無理を承知で新たな心臓弁の開発にチャレンジする。数々の課題をクリアすべく取り組む佃と会社の技術者たち。しかし、開発が進んでいくうちに目の前に立ちふさがってきたのは、ロケット開発の時と同様に巨大企業の一方的な社内倫理観と、医療現場の理不尽な常識だった。

 「佃品質、佃プライド」を掲げる佃製作所は、モノづくりの基本に立ち帰り世の中の理不尽さに真っ向から立ち向かっていく。

  池井戸潤さんの直木賞作品である「下町ロケット」を読んだのは、もう何年前だったろうか。一気に読み進めながら、中小企業を取り巻く社会の厳しさや大企業の理不尽さなどに腹を立てつつ、ラストでは目頭が熱くなるのを押さえきれなかったことを思い出す。

 その後、「半沢直樹シリーズ」で一世を風靡することになる池井戸さんだが、今回の続編は今までのシリーズと同様かそれ以上にすばらししストーリー展開と内容だった。仕事に対する真摯な姿勢と職人としてのプライド、そして正しいことを正しい方法でやりとげる真摯な姿勢と情熱。働くということの原点を教えてくれる一冊だ。

下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画

 

何のために働くのか

 池井戸潤さんの作品には、仕事に真摯に向き合い情熱を持って取り組む人々が数多く描かれている。今回ご紹介した「下町ロケット2ガルディ計画」もしかり、「半沢直樹シリーズ」もしかりだ。そういった部分が読む人の心を打つ。

 「何のために働くのか」という問いに対しての答えは難しい。まずは「生活のため」というのは間違いないが、それ以上に「誰かの役に立ちたい」という根幹の部分は忘れないようにしたい。

 社会人になってから30年ほど働いているが、他人に負けたくないだとかもう少し偉くなりたいと思ったことは、正直言って何回もある。特に若い頃はその傾向が強かったが、若い頃にはそういった負けん気を持つことで、ひたむきに仕事に取り組むという姿勢も生まれるのだと思う。決して悪いことではない。

 しかし、「それだけ」になってしまうと仕事をすることの意味が「自分のため」だけになってしまい、周囲の人や自分の仕事が及ぼす大切なことなどを見失ってしまうような気がする。どこかで誰かの役に立っているのだということを常に心のど真ん中に置いて、「身近な誰かを応援する」という気持ちと「仕事に対するプライド」を頭の隅に置きながら働きたい。

 それが最終的には自分自身の「心の糧」になるのだと思うし、「心の強さ」につながるのだと信じている。