本好きなので、書店を見かけると時間が許す限り立ち寄り、平台や企画コーナーに目を走らせる。また、電車の広告やドアに貼ってある書籍の宣伝にも目を留める。そうやって面白そうな本を見つけると読んでみるのだが、先日電車のドアに貼ってある広告を見て何気なく読んでみた本は、スピード感あふれる非常に面白いミステリーだった。
強盗犯と療養型病院が舞台のミステリー
今日ご紹介する物語は、知念実希人さんが書かれた「仮面病棟 (実業之日本社文庫)」という一冊。療養型病院に人質を連れた強盗犯が押し入るというミステリー作品だ。
身よりのない人を中心にケアをする療養型病院に、ピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城した。先輩医師の代わりに当直のアルバイトを務めていた外科医の速見秀悟は、強盗犯が発砲した際にケガをした若い女性の治療を行うことになる。幸い彼女のケガは大事に至らなかったが、押し入ってきた強盗犯に脅迫されながら、院長や看護師らと朝まで籠城する羽目になってしまう。
治療を行った女性をかばいながら脱出の方法を試みる速見は、その過程で病院に隠された秘密を徐々に知ることになり、犯人と病院側とのギリギリの心理戦を強いられることになってしまう。朝になれば病院を出て行くという犯人と、すぐにでも出て行ってほしいと願い大金を渡そうとする院長。事態は翌朝に向けて徐々に動き出すが、朝を迎えたときに速見は驚愕の事実を知ることになる。
病院を舞台にしたミステリーはこれまでにも数多く出されているが、今回ご紹介した「仮面病棟」は医療がテーマではなく、あくまでも強盗犯との精神的な対峙が主軸となっている。
そこに、病院だからこそ生まれる隠された秘密が横軸となって絡み、読んでいてハラハラするような心理戦が繰り広げられていく。読者は主人公と犯人との心理戦を読むうちに、自分自身が閉鎖された病棟に隔離されているような気分を味わうことになる。
ラストの部分はある程度予想できるかもしれないが、ただ単に犯人の狙いや病院の秘密が暴かれるだけではなく、さらにもうひと捻りされた結末を迎えるところに驚いてしまう。
物語はテンポよくスピーディーに展開されるため、読者もテンポ良く読むことができて一気読みをしてしまうかもしれない。それほど引き付けられる内容だし、スピード感にあふれている。
週末にじっくりと一気読みするには最適の一冊。今回もまたオススメです。
心理戦を扱う映画と言えば
この物語に出てくる心理戦の部分を読んで、ふと映画「羊たちの沈黙」を思い出した。
この映画は1991年に公開され世界的なヒット作品になったが、ジョディ・フォスター演じる女性FBI訓練生が、アンソニー・ホプキンス演じる猟奇殺人犯で元精神科医のレクター博士と心理戦を行う場面が非常に印象的な映画だ。
残酷なシーンは出てこないのに、観ていて非常に恐怖感を覚える映画で、こういった映画の作り方もあるんだなと驚かされたことを思い出す。そういう意味では、言葉の羅列を読んで頭のなかで想像する小説は、心理戦を描くことでより想像力をさらにかき立てるのかもしれない。
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